松尾ゆりの予算委員会日誌
 杉並区の予算特別委員会は議員48名全員が参加する委員会です。質問は議員ひとり6分(区当局からの回答を含めて15分)×4ブロック=24分の質問時間があります。大勢の会派は、この持ち時間を融通しあって、1テーマにつき長く質問したり、逆に全然質問しないということができますが、一人会派の松尾ゆりは、毎回必ず質問、しかも6分以内という、なかなか厳しい闘いを強いられます。
 決算委員会の持ち時間5分と比べると1分長いだけで、ずいぶんとしゃべれるのですが、しかし…ちょっと油断をするとあっという間に時計が進みます。
 このページでは、2009年度の予算について質問した11の項目について紹介します。委員会最終日に行った松尾ゆりの発言(意見開陳)は、こちらをご覧下さい。

1.減税自治体構想

松尾ゆりの杉並区議会報告 減税自治体構想については大勢質問しましたが、私は「この構想の目的」について質問しました。

 前に質問した何人かへの答弁が「基金を積み上げて財政のダムをつくる。その果実として将来減税を」という、とても玉虫色な説明で、ある議員の「財政のダムならいざというときに使うことが前提、減税のための原資なら使わずに運用することが前提で、2つの役割は矛盾するのではないか」という鋭い質問にも、答弁は「財政のダム」が中心であるかのような表現だったので、「そりゃあおかしいだろ」と思いました。

 というのは、減税自治体構想研究会で区長が発言を求められ「いろいろ意義はあるが、減税という点はうすめてほしくない。できるかぎり税負担を避けることが目的」と語っており、まあ、名前も減税自治体ですから、当然、「小さな政府」が目標なんですよ。

 なにしろ「減税自治体構想」に本心から賛成しているのは多分区長本人だけなので、この構想は批判が強いです。100年先に減税するなら、今すぐ減税しろ、という声は強いです。あたりまえですが。「減税するため」では説得力がないので「いざというときのための財政のダム」でごまかそうとしてるんじゃないかな。

2.民間事業化提案制度

 民間事業化提案制度とは、3年ほど前に区長が言い出して「区の事業をぜーんぶ公開するから、民間でできそうなことがあったら、どんどん手を挙げて!」とぶちあげたやつです。しかし、昨年は応募が大きく落ち込んでしまいました。応募数と提案が採用された数は
2006年 35件中3件
2007年 31件中5件
2008年 15件中2件
です。

 採用された中には、債権回収とか、税金納付センターの民間委託とかもあります。これらは契約に際して議会でかなり議論の的になりました(お金をとりたてるのに民間にやらせていいのか、など)。

 今回とりあげたのは「駐輪場・放置自転車対策」をパックでやるという事業。この事業を委託されるNPOは、理事長が実は駐輪場管理会社の役員。実態は企業では? しかも、この法人がやっている某駐輪場で働いている人が「この法人は全然駐輪場のノウハウがわかってない。他の駐輪場をみるとよくわかる」と言っていたんです。

 民間事業化提案制度にはランクがあって、
A・B「提案がユニークだから独占的にこの法人にやらせてあげましょう」
A-2「提案はややユニークだけど、それほどでもないから、この法人をふくむいくつかの提案をきいてみてきめましょう」
A-3「提案にはあまり独創性がないので、競争入札しましょう」
ぐらいにランクづけされるんですが、このケースはBで無競争、独占的に仕事を請け負っています。

 提案制度では、区のやっている事業を区がやっているより、質的、財務的に向上させる提案でなければ採用されないはずですが、駐輪場管理と放置自転車対策のパックというだけで、あまり目新しくない。ほかの企業・法人でもできそう。なのに無競争。「民間事業化提案制度」は業務委託の通行手形になっていないでしょうか。こういう不透明なことができてしまう制度はまずいと思います。

3.緊急雇用対策

 杉並区は急激な雇用の悪化に対応するためとして、いちはやく「200人の雇用」を打ち出しました。

 しかし、その内容はというと、まず今年度30名のアルバイト(2~4月)。時給は820円と900円の2職種。採用した人は10人にすぎません(この手の直接雇用アルバイトは安くて短期間でと評判がわるく、他区でも応募がない。荒川区は応募がたった2人)。

 あとの170人は来年度(この4月から)の雇用ですが、そのうち90名は、新しく開園する認証保育園3所および公立保育園の定員増などによるもので、すでに織り込み済み。認証はもちろん正社員の数など知れていますし、公立のほうも職員定数は増やさないはずなので、非常勤やアルバイトと思われる。

 では、残りの80人は? この80人に関しては東京都の補助金100%でやる事業で10の仕事があるのですが、そのうち

(1)ボランティアと明記されているものがあります。

 幼稚園の遠足など行事の際に障害児の介助をする人、3人。ボランティアなので1回(時間とか日じゃありません。回です)2200円。朝から夕方までつきそっても2200円。
 東京都に聞いたところ「就労とみなせるもの」が対象ということなので、この事業は補助金の対象外では?

(2)小学校の理科授業充実のための補助員(7人)

 これはアルバイトで週2日×6時間。月収にして5万円前後です。これはいちおうお仕事ですが、「就労とみなせる」のでしょうか?
 これらの仕事といえないような事業、とくにボランティアまでカウントして「雇用対策」と胸を張っている区役所は人の生活を何と思っているのかと思います。
 さて、まだあるんです。

(3)路上喫煙の罰金徴収

 この仕事だけなぜか「1か月23万4900円」と厚遇でしかも7人。「警察OBですか」ときくと、そうなんだって。だいたい、JRの駅など路上禁煙地区はシルバーのおじさんたちがいっぱいいて注意しまくるので、たばこを吸う人はほとんどいません。(予算委員会の質疑の中でも95%減という数字が出ていました。ほとんど消滅しています)。

 なのに、突然来年度から罰金をとる(2000円)という話が降ってわいた。その理由は東京都から補助金をもらえるのを幸いと、警察OBの天下り先を作るための口実ですよ。

 この件については、都も「公務員の再雇用を対象としたものは対象外」と言っていました。あたりまえです。

 というわけで、あっというまに80人が63人に減ってしまいましたね。200人と胸を張ったけど中身はお寒いものです。もっとも、上にも書いたように自治体の直接緊急雇用は、基本的に安くて短期間で非常に人気がない。それは、なぜかといえば、もともと自治体の非常勤職員の待遇が悪いから、それよりもっと悪い雇用条件になってしまうということで、まず非常勤職員の待遇改善が必要。

 それと、杉並区はガンガン人員削減をやってきて、もうすぐ1000人目標を達成しようかというところまできているのですが、なおかつ、来年度は110人削減のところを「前倒しで120人削減します」となっているんです。役所自ら正規雇用を削減してしまうことほど雇用対策に逆行することはありません。定数削減をやめて、職員定数を増やすことが何よりの雇用対策ではないでしょうか。

4.公務員の職務専念義務について

 労働組合の人が、職場でゼッケンとか腕章をつけることを「職務専念義務違反」といって処分されたりすることがあります。これ自体不当なことだと思いますが、その理屈は「職務にじゃまだから」という理由なのです。数年前国立市で卒業式のときに、日の丸・君が代強制反対の意思表示として、ブルーのリボンをつけてのぞんだ先生が、処分されたという事件がありました。

 ところで一方、いま杉並区は拉致問題の「ブルーリボン」をなんと!職員につけさせようなどということを考えているんですよ(偶然なんですが、同じブルーのリボンなんです)。

 そこで「ゼッケン、腕章がとがめられるのにブルーリボンはつけさせるのか」ということを質問しました。職員課長の答えは「職務上じゃまになるかどうか、その時々の状況に応じて判断する」という内容でした。

 ふうん。でもきっと組合のゼッケンはダメというんだろうな。

 杉並区は6月に拉致被害者家族の横田さんをまねいて講演会をやるんです。そのほかにも拉致問題のビデオを区役所や区民センターでやるのだそうで、私は直接質問しなかったけど、他の議員からは「中止せよ」という意見が出されました。北朝鮮敵視の世論をあおるため、区長が政治利用しようとしているというのがその趣旨で、私も全くそう思います。
 拉致問題の解決のためには、北朝鮮ときちんとした外交関係を築くことが先で、その反対ではありません。区長や、右翼系の政治家がやろうとしていることは、拉致問題の解決を遅らせるだけです。

5.保育園

 保育園については、数百人の待機児が出るだろう状況の中で、かなり多くの議員が質問し、保育課長は大汗かいて答弁し続けましたが、私は本会議での区長のポロッと言ったひとことがとても気になり、質問しました。

 最近「保育園が自由に選べる!」という記事を見ませんでしたか? 国の規制改革会議とか、少子化関係の審議会とかが、さかんに「国が保育園を統制しているのは自由がない。保護者が園に直接申し込み、園を選べるようにすべき」とか「国が施設の基準を決めるべきでない。こういった規制はなくすべき」とか言っているんですが、区長はこれが規制に反対するカッコいいせりふだと思ったんでしょうね。本会議で誰かの質問に対し「だいたい0歳児の部屋はひとり3.3平米だなんていうところまで国が決めているのはおかしい」とかいう発言をしたんですよ。

 解説しておきますと、これは国が定める保育園設置の「最低基準」のことです。「最低基準」というのは、文字通り「最低これだけはクリアしてね」という基準で下限です。何も条件をよくすることを規制しているわけではありません。(ちなみに、3.3平米がコンマ以下だから細かいとかいうのかもしれないけど、単純に1坪ですよね。全然細かくないですよ。)

 本題はこれからなのですが、「区長こういう発言しましたか、どうですか」ときいたんです。そしたら、区長が答えなくて、保育課長が答弁をしましたが、ちょっとちぐはぐだったのです。それで、区長が手を挙げたのはいいけど「記憶にございません」とやったのよ。バカにしてるでしょ(本当に記憶になかったのかもしれないけど、本会議で話したことは責任もって記憶しておいてほしいものです。それに、45歳以下の人には通じないジョークですね)。

 「最低基準を撤廃するという意見なのか」という質問を続けましたが、あとは副区長、保育課長がひきとった。何度もやりとりしたが、要は「都市部では土地がなくて最低基準の面積を確保するのが難しい。だから、認証保育園を作って独自の展開をしている」というものでした。

 これって「最低基準は都市部では守れなくて当然」といっているのと同じことです。区はそういう認識なんだなあと思いました。

(ちなみに、規制改革委員会などは、いま話題のオリックス・「かんぽの宿」・宮内氏らが「自社の都合のいい改正をやってきた」(これは自民党国会議員のセリフ)ものできわめて利己的な動機で「規制はいらない」と騒いできたものです。)

 杉並区はこの間、認可保育園を建てず、認証保育園とグループ保育室で誤魔化してきました。待機児を減らしたというけれど、認証などの認可外保育施設によるものも多かったのです。待機児の急増は今年突然ではなく、昨年春からすでに進んでいたことです。しかし、認証を新しくつくれば吸収できるとタカをくくっていたために、今回の希望者急増の事態に対応できなくなったのです。

 自治体の責務は、最低基準はもちろんですが、その上に上乗せをして、質の高い保育を保証することです。認可保育所の計画的増設が欠かせません。

6.福祉人材の育成
 
 決算委員会で、「地域大学で福祉人材の養成をやったらどうか」と質問したときの答弁は「地域大学の使命は、雇用というより、行政サービスの担い手育成」なのでやらないという答弁でした。

 ところがところが、今回の「緊急雇用対策」は、すべて地域大学で研修してから仕事をすることになっています。これって政策転換ですよね。地域大学が雇用と就労の窓口になっていますね、ときいたら、「状況が変わったので」というのが答弁でした。

 いやいや、だから、状況が変わったのはいいことで、ボランティアとかじゃなく、ちゃんとした職業人を地域大学で養成しようよ、とくに介護人材をね、と要望しておきました。

7.地域包括支援センター

 杉並は包括を20カ所つくって、これはエライんですよ。誰がエライかというと、介護保険運営協議会で「ケア24が20あるんだから、これを包括にして20カ所にすべき」と、がーがー主張した某委員がエライんですけど。

 私の知っている包括支援センターさんはすごく頑張っています。地域の相談事業とか実態把握とか、あとお金にならない地域調査とか、非常に意欲的です。地域にも定着してきて、高齢者に頼りにされています。ほとんど福祉事務所代わりみたいになっているんです。
 しかし、赤字なんです。これは20カ所全部赤字なんです。なので、事務費0.5人でもいいからつけて!と言っておきました。

8.区長への抗議

 「質問に先だって、区長の昨日の答弁についてですが、本会議の答弁について質問したところ、区長は『記憶にございません』と述べました。本当に記憶がないのならば、本会議の答弁は全く無責任になされたということになります。そうでなく、冗談でごまかしたのなら許し難いことです。抗議するとともに、議会の質疑にまじめに取り組むよう猛省を促すものです。」(しかし、このひとことに30秒食われた。6分しかない貴重な質問時間が…)

 区長は何も答えず、区長室長が代わりに「議会にはまじめに取り組んでおります」。

9.校務システムについて

 杉並区は4月から67の全小中学校と教育委員会を結ぶ校務システムを稼働させます。この問題について、主に「自己情報コントロール権」の観点から質問しました。自己情報コントロール権というのは、要するにプライバシー権の一歩進んだもので、自分の情報を勝手にされたくないときに、やめてよ、と言える権利のことです。OECDが定めた8原則という基準があって、公開性とか個人参加の原則という、しごくまっとうなことが定められています。

 さて、今回の校務システムは、カンタンにいうと
(1)各教員にパソコン1台が配られて、学校の中で1つのネットワークになっている。
(2)一方、区外にでかいサーバーがあって、そこには「スクールオフィス」というソフトが入っていて、先生たちは、そこに接続して、学校のいろんな書類をつくる。
(3)区外のサーバには、通知票、出席簿から、学校日誌、保健日誌など、ありとあらゆる学校関係の書類が書き込まれる、という仕組みです。

 いままで、学校の先生が紙でつくっていた書類を全部デジタルにして、しかも外部のコンピュータに一元元管理しようというものです。もちろん、セキュリティに関しては「もっとも信頼性が高い」と教育委員会は言っています。

 しかし、ネットワークのセキュリティは、どんなにがんばってもでかい穴があります。それは人間。人間が外部から接続する限り、必ず、なりすましなどの危険があるわけです。ま、そのことはおいといて。自己情報コントロールに戻ります。

 これまで、先生たちが学校の中で紙ベースでつくっていた書類は、金庫に入れてしまっとけば、安心でした。1枚の書類にアクセスする人は担任と校長だけとか、せいぜい主任とか。そんなもんでした。しかし、デジタルのデータにして、ネットワークにのせるとなると、アクセスできる人間の数は格段にふえます。

 なによりも、そのデータの主体になる人、この場合は子どもの「自己情報コントロール権」が無視されていませんか? 子どもとその保護者が全く知らないところで、成績表や保健の計測結果(さらには、保健室の入退室時間と相談内容まで)などが、外部のコンピュータに書き込まれるのです。

 生徒本人と保護者への説明を行うことと、外部に電子的に保存する必要のある書類は何か、検討してもらうため、「稼働延期」を要請しました。

10.和田中「夜スペ」

 昨年12月、和田中「夜スペ」の個人面談が行われました。区からとりよせた資料によると、通算9日(期間でいうと3週間)、サピックスによる進路面談が開かれています。

 うちの子もいまちょうど中3ですが、12月の前半は、どの中学も進路の最終決定で、非常にピリピリしている時期です。和田中だって、学校が進路面談やっている時期です。ちょうど、それと同じ日付、同じ時間、同じ学校の中で、同じ3年生を対象に塾が面談をやっているんですよ。信じられますか。

 だいたい、平日の11:30~とかいう時間で、和田中(と教育委員会)はサピックスに(正確には地域本部に)面談のための部屋の使用を許可しているんですよ。学校が授業やってる時間に。

 学校教育法は「学校教育上支障のない限り、……学校の施設を社会教育その他公共のために利用させることができる」と定めており、学校施設は目的外使用ができますが、ここにあるとおり「学校教育上支障のない限り」です。授業時間中に塾が借りるのは、どう考えても「学校教育上支障」があるでしょう!

 しかも、サピックスは塾としての推薦枠をもっています。だから、夜スペのかなりの子が、サピの推薦で私学に決めています。もう、学校なくていいんですよ、サピックスがあれば。義務教育9年間の集大成である進路指導を、なんと塾がやるんですから。学校の先生もコケにされたもんです。

 それと、同じ使用許可書によると、土曜日の「夜スペ」は、3年生の普通教室も使用しています。いち保護者として言わせていただくなら、こんなこと絶対あってはいけない! 普通、休みの日の行事などに使うときには、普通教室は絶対貸しません。だって、子どもの私物があるんだから。それなのに、和田中は普通教室を貸し出しているんです。全く、「夜スペ」様が通る、ですよ。

11.中学生レスキュー隊

 決算委員会でも、本会議でも質問してきたので、今回は時間の関係もあり2つだけ。
 まず「レスキュー隊は平成22年度までに全校設置といっているが、今回部活と位置づけたのだから、義務づけではないということか」

 これに対する答弁は、「学校と相談しながらやる」ということで、にえきらないので「義務ではなく任意であると受け取りますよ」と確認しました。

 もう1点は「部活ということで、レスキューに外部指導員を入れることになるが、懇談会に元自衛官が入っている。外部指導員には元自衛官をいれたりしないと約束してほしい」

 これに対しては「懇談会の人選と外部指導員の人選は全く別です」でした。でも、もしも元自衛官なんて人を入れたら、それこそ「教練」ですよ!

 ちなみに、来年度レスキュー隊の予算は850万円。一方、「部活動支援」の予算は(全部の部活あわせて)2400万円。破格の扱いです。850万円の内訳はというと、640万円が「ユニフォームほか消耗品など」そのほかは、合同の合宿にかかわる宿泊費、交通費、つきそいの職員の費用といたれりつくせり。何か他の部活で、公費でユニフォームを買ってくれるなんていうことがあるでしょうか。

 ある議員の質問「野球部のない学校がありますか?」に対し、4校に野球部がないことがわかりました。レスキュー隊の全校設置より、野球部の全校設置をやったらどうなのさ、です。