杉並区の決算特別委員会は議員48名全員が参加する委員会です。ひとり片道5分(往復12分)×4ブロック=20分の質問時間があります。大勢の会派は、この持ち時間を融通しあい、ひとつのテーマで長く質問したり、逆に全然質問しないということができますが、一人会派、杉並わくわく会議の松尾ゆりは、毎回必ず質問、しかも5分以内という、なかなか厳しい闘いを強いられます(鍛錬されるという前向きな見方もできます)。
このページでは、2008年度の決算について質問した6項目について紹介します。最終日の10月8日に行った松尾ゆりの発言(意見開陳)は、こちらのページをご覧下さい。

えらくデカいテーマなのですが、なにしろ5分なので、全く大づかみな話です。しかし、この話は大事なので、ちょっと読んでください。
杉並区はたびたび「行革努力で借金を減らし財政健全化をやった」と豪語します。区長は先日の「減税自治体構想フォーラム」でやはり「人を減らして借金を返してきた」と言いました。皆さんもそう思っているでしょ。それは、果たして本当なのか、ということです。
まず、人を減らしたことは減らした。1000人近く減らしました。それで職員の給与・社会保険料などで31億減ったというんです(99年と2008年の差)。しかし同じ期間に委託料は逆に51億増えました。つまり職員は確かに減ったけれど、財政負担は増えているのです。
しかし委託料というが、職員を削った分だけではないというのが区の言い分なので、じゃあ、何を委託したのかを聞きました。まず、杉並公会堂の支払いが毎年9億余あります。これはこの期間に増えた。それと、ごみの収集が変わって資源の収集を委託した、これが8億、コンピューターのシステム開発、特に戸籍を電算化したという。これは昨年5億ぐらい使っていた。とまあ、主なところはこんなものです。やっぱり民間委託に切り替えたことで委託料が増えているのです。
プラスチックリサイクルのように、今までやっていなかった新規の事業もありますが、しかし、それも含めて区の事業を民間に投げています(まあ、戸籍の電算化は内製するよりは外部委託でしょうが)。つまり、人を減らしてお金を節約したわけではありません。
じゃ、なんで借金を返せた(区債を減らした)のか。
これは簡単です。ひとつは景気がよかったから。だから都も区も税収が伸び、特に都からの交付金が増えました。もうひとつは増税です。高齢者への増税と定率減税の廃止で区民税がぐっと増えました。
これを証明するのにひとつの例をあげると、23区は例外なくみんな借金を減らしています。一番幅の大きい港区は10年間でなんと2割まで減らしています。一番減らしていないところでも7割ぐらいまでは減っています。杉並区は10年前にくらべ区債残高は4割ぐらい。23区合計でも5割程度まではへっています。要するに、この期間、東京だけは(地方は違いますよ)自治体財政が潤沢だったというだけのことです。
山田区長が立派で節約したから借金が返せたのではありません。私たちが「区はお金がないから、民営化します」といわれてきたことも、実はウソだったというわけ。
さて一方、今後経済があまり好転しないだろうことを考えると、区財政は厳しくなるにきまっています。そんな時に減税自治体構想を始めて「財政の1割を貯金する」などと決めてしまったら…。区財政は大変なことになるのではないでしょうか。

「セシオン杉並」などの受付・清掃を委託されていた東宝クリーンサービス社が賃金の遅配を繰り返し、現在2か月分が未払いになっている問題で、職員の皆さんが区と区議会に「解決してくれ」と訴えてきました。この会社は破産となり、区は別の業者に業務を引き継ぎました。
松尾●賃金未払いは違法行為ですね?
答弁■労基法に違反する行為です(同じことなのに違法行為って言わない)。
松尾●これまで、議会で委託先の労働条件について聞かれると、区側は「法を遵守して適正にやっているものと考える」と答えてきましたが、こんなことが起きてしまったのですが?
答弁■契約した会社が不調でつぶれるということはありうることです。業務の遂行は適正に行われました。
松尾●いやいや、つぶれたことが悪いんじゃなくて、賃金未払いという違法行為でしょ?
答弁■区には責任はありません。
とまあ、こんな具合で「契約した事業はきちんと履行されていた。契約先の労働条件については区は責任ない」の繰り返し。
セシオンなどの施設では長い人では10年も働いています。その間、委託業者は毎年入札で変わり、従って職員の雇い主も替わります。それでも、職員の方たちは、しっかりとサービスを維持してきました。企業は間でマージンをとっているだけで、職員さんたちこそが区民サービスの第一線を守ってきたのです。
こういうケースは、このような事件がなくても直接雇用にすべきと主張しましたが「考えていない」そうです。
東宝クリーンサービスは東京都内、23区を中心に全国的な規模で公共サービスを数多く受注していました。そしてすでに分かっているだけでも1000人規模の賃金未払いを起こしています(会社の書類では総額2億だそうです)。民間委託にはこんなリスクがあり、今後は委託については慎重であるべきと問いましたが、担当部長はここぞとばかり「ますます、積極的に!進めてまいります」と答弁しました。ムッとしたのでさらに反論したかったのですが、なにしろ発言時間が5分しかないので、できません(泣)。
次に再発防止についてたずねました。これまで私は何度も議会で「労働モニタリング」の必要性を指摘してきたのですが、今回の事件で、正しさが証明されたわけです。これまで労働条件は野放しできたために、こんな事件を起こしてしまったわけですから。
つい数日前、野田市では「公契約条例」が全国で初めて制定され、野田市と契約する企業は市がもうけた最低賃金を守ることなどが盛り込まれました(こういう全国初ならどんどんやってほしいのですが)。公契約条例については他の議員も質問しましたが、条例に至らなくとも、契約書に労働法令遵守明記、あるいは最低賃金の設定、そして、モニタリングをすべきと求めました。答弁は「履行確認の強化」ということで、これまでの延長上だと、ひきつづき労働条件は野放しということともとれます。
委託先の労働条件についてこれまで区は「法に従って適正にやっているはず。区は関知しない」という姿勢ですが、某区のエライさんに聞いた話でなるほどと思ったのは「民間委託の委託料に出てこない経費がある。それは、人事管理、労務管理の費用だ。民間委託を進める理由のひとつは、区が雇った人に対する人事・労務の労力、費用をきらうということ」でした。杉並区のことをふりかえると、全く納得です。
杉並区では正職員は区内に住んでいない人が圧倒的に多いのですが、非常勤や委託先の職員など不安定雇用の人たちは地元の人が多数です(安いから。遠くの人がわざわざ来るような賃金でない)。区の住民ではない人たちが、業者を通じて、区民を抑圧、収奪するなんて、どこか間違っているのでは。
(追記:その後報道で知ったことですが、同じく東宝クリーンサービスと契約していた板橋区では指定管理者制度の指針をつくり、特別区人事委員会の調査に基づく賃金の基準を提示、また労働条件も含めたモニタリングの強化を盛り込みました。

民間委託になって「応対がよくなった」「若い人が多くて明るくなった」から指定管理でいいんじゃない? と質問した議員がいたので、「区のめざす図書館像って、その程度なんですか!?」と質問した。そしたら中央館長は区のスローガンをなんかながながと答えた(民との協働で個性ある図書館、とかなんとか)。
そこで図書館協議会の某前委員の言葉を読み上げました。
「全館指定管理方針では課題解決型図書館など無理になった。杉並の図書館は愛想のいい無料貸本屋になるだろう」
ところで、これまで民営化を進めるときには、退職不補充、つまりやめた人が出た分だけ委託に回すというやり方が基本でした。たとえば学校給食とか。ところが、今回の図書館はいきなり全館を明け渡してしまうというやりかた。なぜ変わったのか、と問いましたが、特に変わってないなんていうはずした答弁。
さて、指定管理導入の「指針」のことが他の議員の質問で出てきましたのでこれを引用。この指針には、
(1)民間のノウハウを活用できる
(2)区民のニーズに効果的に応える
(3)企業自らが創意工夫により収益をあげる
(4)コスト削減
という4つの視点から検証する、と書かれています。
じゃあ、今回の図書館の件では、いったいどういう検討をして、指定管理がどう有利と判断したのかと尋ねましたが、具体的な回答はなし。「サービス水準の維持向上とコスト削減を両立できる」「総合的に判断した」というんです。そしてその根拠は相変わらず「図書館経営評価」。
そこで「図書館経営評価は各館の比較のためのものですか?」と聞くと、館長は「図書館の改善、充実のため」とかなんとか言ったので重ねて「比較に使うのか」と聞きましたら「比較のためではない」と答弁がありました。しかし、それでも「経営評価で総合的に判断した」っていうんですよね。
すでに指定管理になっている2館の評価はどうなのか。職員の異動についてききました。成田図書館では2007年4月の委託以来18人の職員のうちなんと12人が入れ替わり、阿佐ヶ谷図書館では22中10人が変わっています。館長、業務責任者などは、立ち上げの1年が終わったら、きっちり交代。つまり、立ち上げの時にいた有能な人たちは次の館に行ってしまうんです。
指定管理になると、選書も民間がやることになります。しかし1年しかいない人に選書ができるのですか?という質問をしました。
私も最近学んだのですが、選書というのは、単にこの本がいい、悪いと選ぶものではないんですってね。その図書館の現在の蔵書の構成を把握し、どんな風に変えていきたいか、そのためにはどんな本が必要で、どんな本が不要か、除籍(廃棄)の計画も考えながら構成を設計していくことが選書のベースらしいです。
つまり、来たばかりで、自館にどんな本があるかもわからない人には選書はできないのです。ある集会で、指定管理の選書担当の人は「1年目で選書を任されて不安だった。困った」と述べています。
杉並の公共図書館はいまのところ13館の選書担当者が毎週中央館に集まって選定会議をしているそうです。いまは指定管理2館だしまだ3年目なので、多分区の職員が指定館の蔵書もかなり知っているのだと思います。そのうえで選定会議に出し合うから、調整がとれていくのでは?と思います
結局まだ2館の指定管理だからこそ、あまり問題もおこさずにやれているのではないでしょうか。
このこととあわせ、東宝クリーンサービスの問題から民間委託は問題だということをあらためてのべ、図書館協議会で会長が「近々指定管理には破綻が起こるのではないかという強い懸念がある」と述べたことに対する所見を求めました。

図書館の本は、かつては書店組合が全部納入していた、という話をきいて、質問しました。答弁によれば、いまは書店組合とTRCが半々、その他特別な洋書などは別に発注しているそうです。
区によっては、全額を書店組合から購入しています。それはやはり区内産業の振興のためであり、いまや絶滅危惧種になってしまった町の書店を守るためです。杉並区も書店を優遇していくべきなのです。
また、全館が指定管理になったときに、丸善やTRCなどの流通業者が購入も独占する可能性はないのかとの心配もあります。今のところ、区が一括購入ということのようですが、全館を民営にするのだから、当然購入に手を出すことが織り込まれていると思います。大変きがかりではあります。

9月初めに区長がとつぜん記者会見をして「介護と保育の安全安心プラン」を発表しました。特養300床、保育の受け皿1200人分を平成25年までにつくるというんです(このときの記者会見には「減税自治体構想」も)。保育はご存じのように、大量の待機児が問題になっています。今年から5年で1200人の保育園ができれば、どんなにか素晴らしいことです。が。そうじゃないんですね。
まず1200人のうち半分近く550人ぐらいが「幼稚園」です(私立幼稚園の預かり保育で340、問題の区立園の「子供園」化で210名)。この段階で「なーんだ」ですね。
とはいえ、この間の杉並区にはなかった新しい事業が。それは「認可保育園の新設」。計画期間に4園とされています。
「どこにっ??」と期待しますが、実はまだ1つしかはっきり決まっていません。それでも、これまで「認可園は建てません。認証でいきます」と言明していた杉並区にしては画期的なことなのです。少なくとも「あと4園建てるよ」と区民に発表しちゃったわけなので。4園といわず、ぜひがんばってほしいものです。
ところで、なんで今頃こんなにバタバタしているかというと、今まで怠けてきたからですね。区は「昨年のリーマンショックで、急激に保育需要がふえて」というんですけど、4年前に「保育サービスの新たな展開」という報告書を出したとき区は現在程度の保育需要の「率」は想定していたのです(問題は人口が増えてしまったことでしたが)。
それに当時だって、待機者は多かったし、待機の解消はテーマだったのです。しかし、区はそれをすべて「認証で」として、区の責任で認可を建てるということをしてきませんでした。そのツケがまわってきたのです。
しかも、これからしばらく人口も増えるし、保育需要は増えることはあっても減ることはないと思われます。認可保育園を建てることに転換した(区は転換したとはいわないけど)のだから、これからの膨大な保育需要の伸びに見合うよう、腰を据えて保育行政をやっていただきたいもの。

さて「安全安心プラン」には「区立幼稚園の活用」という項目があります。それが例の「子供園」化です。しかし来年度はわずか18人の受け入れにすぎません。どーーーしても来年度から始めなくてはならな理由は、全くないと思います。しかし、幼稚園での説明会では、来年度という方針は絶対譲らないという姿勢で区は一貫しています。
ここには「3歳児の受け皿」というテーマがひとつあるんです。実は保育需要が急激に伸び始めたのは3年前。そのとき0歳だった子供たちは、毎年厳しい保育入園競争にさらされながらいま3歳になっています。認可に入れず認証などにいる子たちが、そこから出て幼児としての集団活動を始めるのが来年度。そのため、区立幼稚園がターゲットにされてしまったというわけです。
なんのことはない。3年前に「やばい!」と感じる敏感さとそれに対応できる柔軟さが区にあってそこから認可を増やす準備をしてくれば、このようなことにはならなかったのです。
で、幼稚園を待機児対策の犠牲にするのか、というと「いえいえ、新しい幼保一元という独自のとりくみなんです」というから「じゃあ、急がずゆっくりとプランをたてたら」というと「でも待機児対策は急ぐ」というんですよ。どっちなのよ。という質問をしました。
答えはわかってるんだけどね。「両方です」ってことなの。しかし、幼稚園の保護者は現状がよくて、変えてほしくないわけ。他方保育園の親はどうなのかというと、説明会で発言した人がいたんだけど、全然こんなところに預けたいなんて思っていないわけですよ。どっちから見ても中途半端で役立たずになってしまう。虻蜂取らずです。
「保育園の保護者が説明会で質問したでしょ。どんな質問でした」って聞いたのですが、なんか全然うそっぱちな答弁だったので、「体制が薄くて心配であずけられない、働く親がほしいのは認可保育園だっていうことを、区はどうしていつまでもわからないのか」という発言だったでしょ、とぶつけました。
このへんでもう残り時間30秒という状態になってしまったのですが、最後に今年は条例変更は2園だけだが、あと4園はどうするのか。と質問しました。
説明会ではあたかも2年目以降の4園はまだ方針変更の余地があるととれるような答弁をしていて、お母さんたちは「もしかして、まだ変更してくれる?」と期待していたのですが、それは違いました(ダマシですよね…)。6園の転換はこれで決定なんだと。ただし、充足率とか応募状況とかを見て、定員とかは柔軟に対応するという言い訳なんです。
