セシオン杉並等賃金未払い事件と公契約
2009年11月25日、松尾ゆりは杉並区議会一般質問に立ち、セシオン杉並等賃金未払い事件と公契約について、地域図書館の全館指定管理者制度導入についての二点について質問しました。ここでは「セシオン杉並等賃金未払い事件と公契約について」の質問原稿を紹介します。これは発言原稿で議事録とは細かな点では違いがあることをご了承下さい。

セシオン杉並等賃金未払い事件と公契約について

●セシオン杉並など賃金未払いの職員に区が補償を

松尾ゆりの杉並区議会報告 区政一般について質問をします。第一に、セシオン杉並など区民施設の賃金未払い事件と、これに関連して公契約改革について質問します。

 雇用・経済情勢が悪化しています。失業率は5.3%、全国で363万人が失業しています。中小企業の経営も困難を深め、倒産、廃業は年末に向けますます増加すると思われます。区民生活を守り、支える区の役割が切実に求められています。こうした観点から、今回の事件について区の認識をうかがいます。

 先日の決算特別委員会でも今議会でも、多くの議員がこの問題をとりあげましたが、区は「委託先の雇用関係の問題であり、区には責任ない」と、非常に不誠実な態度に終始しています。 問題の東宝クリーンサービス社は、2年ほど前から財務状態が悪化し、安値で入札を繰り返しては、その委託料を資金繰りに当てるという自転車操業的な経営状態に陥っていました。こうした実態を見抜けず、安いからと契約して、これらの施設で働く皆さんに損害を与えた区の責任は重大です。

 また、給与遅配について、職員さんたちから直接の訴えがあったにもかかわらず、区は委託料を会社に払いつづけ、委託料は資金繰りに流用されて、結局2か月の未払い賃金が残ってしまいました。このように区の対応に手ぬかりがあったことが、事件をひきおこし、損害を拡大したことについての、区の反省はないのでしょうか。あらためて見解をうかがいます。

議会で指定管理者制度の問題点を質問 すでに、東宝クリーンサービス社は倒産しており、給与支払いは不能となっています。労働組合が結成され管財人と交渉していますが、大変厳しい状況です。 杉並区は、事業の実施主体として、業務の履行が危うくなっていることをつかめなかったか、あるいはつかんでいたのに放置した点で、明らかに瑕疵があります。職員の皆さんに対し補償すべきではないかと考えますが、いかがか、見解をおたずねします。

●「働く人の生活は成り立つのか」との危機感

 さてこのような事件を二度と起こさないため、公共の仕事をどのようなルールのもとに行っていくかを、行政も議会も、あらためて考えなおす契機となりますし、またそうしなくてはなりません。

 9月、全国で初めて公契約条例を制定した野田市の市長はインタビューに答えて、公契約条例を制定したのは建設ユニオンの要望をうかがったことがきっかけだったとして、「私自身も、入札価格が極端に下がっていることは感じていた。それが公共サービスの質の低下、安全性の軽視につながらないか、働く人の生活は成り立つのかという危機感を抱いていた。官製ワーキングプアを行政がつくりだすことは、好ましいことではないし、まわりまわって住民サービスの劣化にもつながる」と語っています。

 市民の生活と、公共の使命についての、非常にまじめな見解であると思います。この市長の見解に対して、同じ地方自治体の長として、区長の所感をうかがいます。

●公共サービス水準を確保できる賃金水準を

 当区の場合、いっきに公契約条例とはいかなくとも、制度の改善、強化で、労働条件とサービス水準を高めていくことはできます。以下いくつかの観点から質問をします。

 まず、杉並区の制度についてうかがいます。杉並区では入札にあたり、最低制限価格制度、低入札価格制度がもうけられていますが、その概要はどのようなものでしょうか。お示しください。

 また、業務委託に関して、これらの制度が適用されたケースが制定以来、年度ごとに何件ぐらいあったでしょうか。こうした制度は、労働条件やサービスの質を確保するために重要とは考えますが、現状でこれらは十分に機能しているでしょうか。区としての評価をうかがいます。

 さて、チェックを強化するためには、賃金水準について、区としての一定の見解を示すことが必要ではないでしょうか。たとえば熊本市では、指定管理者に対し、「指定管理者制度に関する指針」をつくり、人件費のモデルになる単価表を示しています。私は昨年、熊本市のサイトでこの「指針」を見たので、今回調べてみたところ、今年の8月に、単価表が改定されており、賃金水準がひきあげられておりました。熊本市は一回つくったらそれで安心ではなく、見直しを行って、不断に指定管理の水準を点検しているということがわかります。

 また、板橋区は、指定管理者に対し、「官準拠の賃金水準」を求めていくという方針を発表しました。こうしたことは、杉並区も少し努力すればできることです。区として適正な賃金水準を研究して示すぐらいのことはできないのでしょうか。見解をうかがいます。

 さらに、荒川区では、労働集約型業務委託、たとえば清掃や警備などの入札時に賃金、社会保険料等を含む内訳書の提出を義務付けているとのことです。これも有効な手段です。区でも実施してはいかがでしょうか。

●労働条件のチェック機能強化を

 ところで、23区の多くで、さきほどのべた、最低制限価格や、低入札制度を持っているのですが、それにもかかわらず、東宝クリーンサービス事件ではそれらの区も、同じように問題を見逃してしまっていました。ですから、契約時にチェックするだけでなく、その後のチェック強化が必須であると思います。

議会で指定管理者制度の問題点を質問 以下、指定管理者制度についてのモニタリングの事例を紹介します。

 世田谷区では、指定管理者に対し義務づけている業務報告を、今後区議会および区ホームページにも報告し、行政、議会、区民の3者によりモニタリングを強化するとのことです。これなど、やろうとすれば、すぐできそうなことですが、いかがでしょうか。見解をうかがいます。

 千代田区では労働モニタリング制度をもっています。指定管理者のすべてに対し、指定の1年目に社会保険労務士など専門家を派遣し、それこそ、雇用契約、就業規則から、賃金、労働時間、社会保険などについて、書類上の審査だけでなく、現場の調査、さらに雇用されている当事者への聞き取りなど大変詳しく調査を行い、問題があれば改善を求めるという形で行われています。千代田区の担当者にうかがった話では、指定管理者導入にあたって、行政サービスの水準を低下させないためにどうするかと考えた結果が、この詳しいモニタリングの導入だったということでした。
 
 私は今年3月の予算特別委員会でこの千代田区の制度を紹介し、これを当区でも行ってはどうかと質問しましたが、区の答弁は「区が委託先の労働条件にかかわることはふさわしくない」という残念なものでした。まさに、こうした姿勢が、今回の事件を引き起こしてしまったのです。

 東宝クリーンサービスの事件を経て、また、あとに述べる図書館の問題など、指定管理者導入の拡大も計画している杉並区として、労働モニタリングの必要性が増大しているのではないかと思いますが、導入についての、見解をうかがいます。

●清掃の民間委託では死亡事故も

 さて、セシオン等の現場では、働く人は同じで、企業だけが変わっていく「居抜き」のような状態になっていました。10年も働き続けているベテランの人もいるそうですから、どんな企業が委託を受けても、業務がとどこおおることはありませんでした。

 他方、企業は短期間で入れ替わるので、現場のことはわからず、ただ、区と職員の間に入って中間マージンをとっているだけです。民間のノウハウなどといいますが、ノウハウは職員さんたちの所にあって、企業にはなく、委託するメリットはありません。

 区は、このような不自然、不正常な契約、雇用関係をやめて、直接雇用に転換すべきと考えます。この点について見解をうかがいます。

 山田区政の10年間、多くの業務が民間委託されました。そのたびに、区民、利用者からは、公的責任の問題やサービス水準の低下、また民間委託先で働く人たちの労働条件の劣悪化の問題など、多くの反対の声が出されてきました。今回の東宝クリーンサービスの事件は、これらの懸念が的中したものです。まさに山田区政の民営化の犠牲者といえます。
 民間委託は質の向上に寄与するところが少ないうえに、決算特別委員会で指摘したように、職員を減らした行革効果以上に、委託料がどんどん増えていくという実態があります。経費削減にすらなっていません。

 区でおきた事故ではありませんが、9月には品川の清掃工場で21歳の若者が機械に巻き込まれて亡くなるという悲惨な事故が起きました。この方は民間委託先の派遣社員でした。
 賃金の問題ばかりか、命までも奪われるようなことすら起きているのです。こうした事件をもふまえ、区は民間委託に関して慎重姿勢に転ずるべきと考えます。

 今回の事件は全国的な広がりをみせ、区の施設に働く人たちに対して区がどのような対応をするのか、区民だけでなく、全国各地から注目されています。この項の最後に、改めて区の見解をうかがいます。

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