地域図書館の全館指定管理者制度導入
2009年11月25日、松尾ゆりは杉並区議会一般質問に立ち、セシオン杉並等賃金未払い事件と公契約について、地域図書館の全館指定管理者制度導入についての二点について質問しました。ここでは「地域図書館の全館指定管理者制度導入について」の質問原稿を紹介します。これは発言原稿で議事録とは細かな点では違いがあることをご了承下さい。

地域図書館の全館指定管理者制度導入について

●図書館の指定管理導入を議会にも知らせず決定

松尾ゆりの杉並区議会報告 次に地域図書館の全館指定管理者制度導入についてうかがいます。まず、この問題のそもそもの発端です。

 7月の協議会では、今回の「全館」という決定に至る経過説明があり、「区立図書館では2005年に図書館の経営改革の基本方針を定めている」「そのなかで、民との協働で個性ある図書館づくりの方針を定め、業務委託、指定管理者による図書館運営を推進してきた」とのことでした。

 そこで、2005年当時どのような議論があったのかと思い、私は、区議会文教委員会、および教育委員会の議事録を検索してみました。ところが驚くべきことに、この文書が当時、区議会および教育委員会で報告された形跡が全くなかったのです。もちろん、広報など、一般区民にも全く公開されていません。

 杉並区の民間委託が区民の中で大きな問題になったテーマとして学校給食がありました。当時、区主催の公開の説明会が学校、PTAの他、区民施設でも数多く行われたことを思い出します。

 学校給食の利用者は多いとはいえ学校に通う子どもとその保護者に限定されています。それに対し、図書館は区民誰でも利用できる施設であり、登録者数16万人、貸し出し人数のべ116万人と膨大な利用者がいます。民間委託に際して、学校給食以上に説明会を開き、広報に掲載して、区民に周知をはかり、意見をきくべきところです。

 ところが、図書館に関しては、わずかに協議会で報告がなされたのみで、議会にすら報告がなかったことは、許しがたいことです。区は行政としての説明責任を全く果たさず、区民と議会の見えないところで、勝手に計画を決めていたのです。区民軽視、議会軽視といわれても仕方がないのではありませんか。区の認識をうかがいます。

 今回もまた議会や図書館に関心をもつ一部の区民をのぞいては、いまだに圧倒的多数の区民が、この方針のことは全く知りません。本来であれば、2005年の方針決定のときに、区民に周知をはかり、意見募集を行うべきでした。しかし、それが行われず現在にまで至っているのですから、「全館を2年で指定管理に移行」と決定した今回こそ、まず区の方針を区民に周知し、意見を問う手続きを行うべきです。それまでは指定管理者の決定を行うべきではありません。そうでなければ、だまし討ちというものです。見解を求めます。

●図書館行政の方針を持たない杉並区

 さて、この「図書館の経営改革」方針について質問します。
 まず不思議なことは、これだけ重大な方針にもかかわらず、確認された文章としての方針がないことです。

 この方針を審議した図書館協議会には、図で示した数枚の説明が提示されたのみで、文章では示されていませんし、他に公開された文書もありません。区立図書館全体の経営計画が、たった数枚の絵で表されたまことにおそまつなものでしかないことは、区がいかに図書館行政を軽視しているかの証拠です。山田区政のもとで、いかに杉並の文化が貧困化してきたかを痛感するものです。しかも、このお粗末な経営改革方針以外に、図書館の方針を定めた計画がないことも驚きでした。当区には図書館の長期計画がないのです。

 さて、素材がこれしかないので、仕方なく、この「経営改革」方針をもって、検討していくことにします。このペーパーの中に、行政と民間企業の分担を示した図があります。行政責任を明確にすべき領域、つまり行政が行うべき部分として「マネジメント」(政策立案、企画運営)が示され、一方、「委託・指定管理者制度の導入」として、「閲覧、貸し出し、配架」などが示されています。

 ところで、この図は2つにきっぱり分かれているのではなくて、官民の中間の領域が「付加価値の創造」として示されています。これは、業務委託・指定管理には必ずしもふくまれない、オプション的な領域と理解できます。ところがここに、蔵書構成、データベース、ネットワークの拡大、などが含まれています。
 これらのやや高度な業務は、図書館を運営する上で、当然主体的に行っていくべきことであり、図書館経営の根幹ともいえることです。これらが、必ずしも指定管理者に要求されていないとすれば、問題です。この計画では、図書館の質の向上が担保されていないと受け取れますが、いかがでしょうか。

 別の図には「指定管理者制度導入の留意点」という項目があり、そのなかに「サービスの継続性、蓄積性、安定性、専門性等」とあります。これも何の説明もない単なる箇条書きなので、どのように実現されるのか全くわかりません。業務要求水準書の中では、どのように位置づけられているのでしょうか。

●指定管理者選定過程の公開、透明化を

 次に、指定管理者の選定について質問します。

 2005年から図書館の民間委託がはじまりました。この間の推移をみると、選定委員会の構成や選定過程に変化があることがわかります。委員会全体の人数は減らされ、今回は5人の委員でした。また、これまで、民間委託の場合には現場視察が行われたケースもありましたが、今回は行われていません。会合は、2回しか行われていません。第一次選考に関しては、合議ではなく、個々の委員がばらばらに書類審査を行い、点数をつけるという形で行われています。

 委員会は、個々の委員の判断もさることながら、委員会メンバーが一体となっての意思形成のプロセスが重要で、そのためにこそ、委員会としての設置、任命が行われているはずです。たとえば、保育園や学童クラブの委託にあたっては、保護者側の委員も交えた選定委員会が毎週のように数多く開かれ、保護者委員からは「会議が多すぎ、負担になる」との声も聞かれたぐらいでした。それに比べ、今回の委員会は2回で、とうてい合議体としての意思形成ができるとは思えません。

 そこでうかがいますが、選定委員会の活動が以前よりも簡略化されたのはなぜか。また、今回のようなやり方で、委員会が十分機能を全うしたといえるのか。お答えください。

 さらに選定の透明化についてうかがいます。

 他区では、図書館の指定管理者選定のためのプレゼンテーションを公開で行ったところがあります。また、当区においても、かつて学童保育の委託の際に、公開プレゼンテーションを行った実績があります。今回はこれだけ注目されている問題です。プレゼンテーションを公開で行うべきだったのではないでしょうか。また、業者名の公表についてですが、候補者に内定した事業者だけでなく、落選した応募企業についても、最低限社名の公表を行うべきと考えますがいかがでしょうか。

 総じて、今回の指定管理者選定においては、選定過程として委員会の意思形成が十分に行われたとは考えられず、また、公開性も不十分であり区民にたいし説明責任をまっとうできるだけの水準とは思えません。選定のやり直しを求めます。

●職員の3分の2が入れ替わり、それでも契約継続

次に指定管理館の評価、検証について伺います。

 杉並区の「指定管理者制度導入の指針」では、指定管理者導入後も検証を行うとされています。それでは、すでに導入された2館については十分な検証が行われたのでしょうか。

 区の説明では、図書館経営評価で指定館の検証を行ったことになっています。しかし、図書館経営評価は指定館の履行確認、検証ではありません。図書館協議会の審議を経て、履行確認的な経営評価から、杉並の図書館ネットワーク全体の質向上のために評価を行う、もっと視野の広いものに変わっています。しかも、この経営評価は区としての初めてのものであり、不十分な点や問題が指摘されたので、今年度は評価のやり方を修正して行われているものです。指定館にとっても指定1年目のものでしかありません。7月の図書館協議会では、指定管理者は「指定管理はまだ結果が出ない」との専門家の発言もありました。

 2館について、経営評価と別に、協定書にもとづく履行状況の確認、財政効果および職員の配置や稼働状況についての根拠ある説明とその検証が求められます。このような検証は、果たして行われたのでしょうか。

 また、求められる質の向上はできているでしょうか。

 人員配置の点だけ見ても、指定管理館である阿佐ヶ谷・成田の2館は、館長が2館兼任の時期があったり、館長が1年でやめたり、2年間で3分の2の職員が入れ替わるなど、人員配置上の問題点がありましたが、今回事業者は継続となっています。こうした問題が指摘されているのに、なぜ継続されるのでしょうか。検証が不十分としか言いようがありません。

 指定管理者制度の検証に関連して、「第三者評価」のしくみが計画されています。第三者評価は、さきほどのべたような、厳密な履行確認を行うのでしょうか。また、この第三者評価では、業務要求水準書をクリアしていれば、よしとされるのでしょうか。水準書は最低のレベルではないのでしょうか。見解をうかがいます。

●時代は変わった。曲がり角の指定管理者制度

 さてこのかんも指摘をしてきたように、すでに国会では「指定管理者制度は図書館になじまない」という答弁がなされ、あるいは衆参両院でも附帯決議が上がりました。日本図書館協会の調べでは、図書館に指定管理者を導入している自治体は全国の約7%にすぎません。国レベル、あるいは全国レベルでの、指定管理者、とりわけ図書館への指定管理者制度は、導入に関して慎重姿勢に転じ、直営回帰といった現象すらみられるようになっています。

 振り返ってみますと、現在の「図書館の経営改革」方針が定められたのは、2005年10月、あの郵政選挙の直後でした。小泉改革の絶頂期、官から民へ、民間にできることは民間に、という掛け声がすさまじく、杉並区においても、民間委託がどんどん進められていた時期でした。

 当時の中央図書館長は、2006年9月、文教委員会の質疑の中で、日本図書館協会が、指定管理者制度は公立図書館の運営には基本的になじまないという見解を発表したことに対して、次のようにのべています。

「その図書館協会の見解は、非常に旧態依然とした、とるにたらない議論だろうというふうに私は思っています。いわゆる時代錯誤的な発想が根底にあって、今の時代には必ずしも沿わない、そういうふうな評価を私自身はしております」
 まあ、なんというか、唖然とする尊大な発言ですが、こういう感覚で図書館の指定管理化を決めたのだということはよくわかります。

 しかし、わずか3年前のことではありますが、今の目でみると、まことにそれこそ「時代錯誤」な発言です。それほど3年の時代の変化は大きく、すでに結論にいきついているのではないでしょうか。すなわち、日本図書館協会のように、図書館運営を指定管理にゆだねることの不安定さや危うさに警鐘を鳴らした人々の見解が、結局のところ、世論の大勢になりつつあるということです。

 社会の各方面で、民営化や規制緩和が進んだことによって、私たちの暮らしがよくなるどころか、かえって、賃金は低くなり、雇用は不安定になって、生活が苦しくなるばかりだったということもその背景にあります。

●図書館経営のグランドデザインを

 杉並区だけが、小泉改革時代の古い方針でいまだに「全館を指定管理に」などと言って取り残されています。すでに今年で5年目になる、この「図書館の経営改革」方針は時代に合わなくなっており、抜本的に見直すと同時に長期的な基本方針をもつ必要があると考えますが、いかがか。見解を求めます。

 それにともない、当然ながら、今後提案されることになっている、地域館の全館指定管理方針は凍結、再検討を求めます。

 杉並の公共図書館のめざすグランドデザインがつくられないまま、区長の任期という締め切りに合わせた民営化政策に振り回される杉並の図書館は、方向をみうしない、やせ細っていくばかりです。それは、単に本が手に入りにくい、といったレベルにとどまらない、私たちの生活の根幹を支える知的インフラの劣化、崩壊へと至るものです。

 「文化果つる杉並」と言われないよう、図書館を担う、理事者、職員の皆さんの奮起を促し、また、区民のひとりとして、我々の図書館の発展を願い、質問を終わります。

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