松尾ゆり

わくわくレポート106号 2008年9月

福田首相を追いつめたものはなにか

福田首相辞任!

 「まさか」も2年続くと「サプライズ」ではないかもしれませんが、やはり一国の首相が自ら辞めるというのは尋常なことではありません。昨年のサブプライムローン危機以来、世界の情勢は劇的に変化し、この1年、米国発の経済危機が日本を直撃し、国民は急速な物価高に苦しめられています。

 福田政権が小泉・安倍政権から引き継いだ使命は、財界の求める「財政再建」と自衛隊の海外派遣(給油活動やイラク)を伴う外交的発言力の強化でした。

 しかし、原油高、食品値上げなどによる生活と営業の危機を前に、財政再建もままならず、給油活動の継続も「ねじれ国会」のため難しいという状態では、政策の選択の幅は限られていたのです。

 自民党総裁が誰になろうが、仮に民主党が総選挙で多数をとって政権交代となろうが、財界のめざす路線に従うかぎり政治が大きく変わることはありません。

 漁業者、農業者、トラック業界など、次々に集会・デモなどの行動で、窮状を訴えています。国民各層から政治の変革を求める行動を強めていくことこそ、本当の解決につながっていくのではないでしょうか。


「杉並病」と「寝屋川病」

「杉並病」と同じような公害が、いま大阪で問題になっています。その名も「寝屋川病」。寝屋川市の2つのリサイクル施設が公害の発生源であるとして住民が裁判に訴えています。

 1つは「北河内4市リサイクルプラザかざぐるま」。容器包装プラスチックを資源回収し(杉並区と同じシステム)選別・梱包などの作業を行っています。もう1つはリサイクル・アンド・イコール社という廃プラから輸送用パレットを作っている会社で、こちらが主な公害発生源と疑われています。疫学調査でも大気の分析でも、これらの施設が原因だという証拠が出ていますが、果たして判決はどうなるのでしょうか。

 先日、この寝屋川市の視察に行ってきました。現地に行って被害者の方たちと話をすると、杉並病の被害と同じ部分が非常に多いことがわかりました。

 湿疹がなかなか治らないという人。工場の方からいやな臭いの気体が流れてきたと思ったら、のどが痛くなったり、せきがとまらなくなったという人。すでに重症の方も出ていて、全身が冷たくなって吐き気がし、食事できないという若い女性は家族とともに転出したそうです。

 また、この地域には学校、病院、サナトリウム(!)、介護施設など教育、医療、福祉施設が多く、これらの利用者への影響も心配とのことでした。

 「杉並病」で不燃ごみから発生する化学物質公害を経験した杉並区が、健康被害を真剣に解決しようとせず、「臭い物にフタ」をしてしまったため、新しい公害が起きてしまったことに、大きな責任を感じます。


ゆり発
混迷する「自立支援法」に悲鳴

 先日、障害者団体の自立支援法学習会に参加し、利用者の生々しいレポートをお聞きしました。

 移動支援については、まず時間数の問題。杉並では月25時間までしか使えないこと(他区では50時間というところもある)。また、作業所などの通所がバスに切り替えられて移動支援が使えなくなった。これまではガイドヘルパーに同行してもらって、電車などで通い「途中で町のおじさん、おばさん、駅では駅員さんに声をかけられ、地域にふれあって自立して生活している実感がもてたのに」とのこと。

 グループホームについては、国が障害者の施設を作らないと決めた中、受け皿として頼られるべきグループホームなのに、安全面などで不安が多いとのこと。以前、神奈川県でグループホームの火事があり、火事が起きたとき管理人が不在だったと知って驚きましたが、これは違法ではなく、夜間の職員配置がなんと義務づけられていないのです。

 作業所に通っているある方は、自立支援法になって、作業所の利用料が発生し、働いて受け取る工賃よりも利用料のほうが高くなってしまったとのこと。区民がもっとこの問題に関心を寄せ、声を上げて改善を求めていくことが必要だと思いました。