松尾ゆり

わくわくレポート152号 2013年2月

最も弱い立場の人たちにしわよせ 国も区も

 安倍政権のもとでの予算案が発表され、生活保護の削減が問題になっています。他方では、「孫への教育費」の非課税など富裕層への優遇を行っていながら、保護費の削減を行うのです。

 では、杉並区はどうなのか。
 今月初めに発表された区の来年度予算案では、生活保護世帯の子どもへの区独自の支援を打ち切ることが発表されました。これまで夏季活動費や修学旅行費などのために助成されていた事業です。そのかわり、中3生のみ、塾へ行けば年間15万円を補助するそうですが、足りない塾代は当然負担しなければなりません。

 国の削減と区の削減が重なったら、さらに大きな打撃になるのに、なぜ区はこんなタイミングで廃止するのでしょうか。障害者福祉の分野では、杉並区内のある作業所で、昨年から制度変更により、区外から通って来る人の交通費が出なくなり、やむをえず事業所が負担しているそうです。「都営住宅があたったとか、いろんな事情で引っ越した人たち。貧しい人ほど住むところを選べない。それなのに…」

 また、ある事業所では、通所のための自己負担金への補助一人数千円がカットされたそうです。今回の予算には、一部ですが、保育料の値上げも組み込まれています(値下げされる部分もあります)。福祉の利用者にも事業者にも負担が増える方向で区の予算がつくられています。

 杉並区は東京電力のグラウンドを60億円で買収、来年度も旧近衛邸「荻外荘」を30億円で買う計画です。それだけのお金を使える杉並区がなぜわずかな補助金をカットするのでしょうか。ほんの数千円、数万円のために、生活が一変したちゆかなくなる人もいるのです。そうした最も弱い人たちのための行政はずではないのしょうか。憤りをおぼえます。

保育園の事故が増えている

 先月、昨年(2012年)の全国の保育園の死亡事故が18件にのぼったと報道されました(1月19日付各紙)。前年と比べても増えているそうですが、実はこれはとんでもないひどい数字です。

「2001年、保育園の定員や保育士の資格要件が緩和され、それを境に、保育園での死亡事故が激増しました(2000年までの40年間で15件しかなかったものが2001~08年の8年間だけで22件)。」

 これは、2009年の私のホームページの記事で、新聞報道をもとにしています。当時、8年間で22件というのが衝撃でした。それが、昨年は1年で18件! 18件のうち、認可施設で6人、無認可で12人が亡くなっています。保育施設が子どもにとって安全な場所でなくなっているのです。

 今回、事故数全体でも145件と、前年から1.6倍に急増しました。事故が前年から急増したことについて「厚労省は、保育施設の利用者増加などが要因とみている。」と記事にありましたが、とんでもない。規制緩和が保育園での子どもの安全を脅かしているというのが真相ではないでしょうか。

朝鮮学校への支援をうちきる自治体

 北朝鮮の3度目の核実験が行われたと報じられました。核実験、核兵器にはもちろん反対です。しかし、核実験を理由に神奈川県などいくつかの自治体が朝鮮学校への補助金を打ち切るというのは、とんでもない筋違いです(東京都はすでに3年前から補助金を停止)。

 阿佐ヶ谷にも朝鮮学校があります。子どものころは男子が朝鮮学校の生徒とケンカをしたとか聞いたこともありました。しかし、朝鮮学校の保護者の皆さんの努力もあり、近隣の小学校とも、保護者ぐるみ、地域ぐるみのおつきあいが広がっています。

 朝鮮学校は日本の学校と同等の資格を認められないために公的な補助は少なく、保護者の負担は大変大きいものがあります。それでも民族の言語と文化をしっかりと引き継ぎたいと運営して来ました。子どもたちが自国の文化を学ぶ機会を奪う権利は誰にもありません。まして、国家間の政治的な問題の犠牲にすることは許されないことです。

 国の制度である高校無償化からも朝鮮高校だけが外されたままであり、国連人種差別撤廃委員会からも是正の勧告を受けています。日本人のひとりとして、本当に恥ずかしいことだと思います。