松尾ゆり

わくわくレポート159号 2014年1月

新年を迎え、皆様にはいかがお過ごしでしょうか。

 昨年の臨時国会では特定秘密保護法が成立、年末には靖国参拝と、安倍政権は「戦争のできる国」に向かって前のめりです。普天間基地移設も強引に進められようとしています。他方「アベノミクス」は大多数の国民には恩恵なく、逆に今春には消費税増税、高齢者医療費の引き上げと負担増が控えています。

 都政では猪瀬知事が退陣。前回からたった1年で、また知事選が行われますが、オリンピックや「国家戦略特区」の利権に血眼となる政治家たちは都民の生活など眼中にないようです。

 今年は杉並区でも区長選が予定されており、4年間の田中区政が審判を受けます。杉並わくわく会議と松尾ゆりは、区民不在の区政を転換し、区民が主人公の「自治体」を実現するため、今年も、皆様とともに活動していきます。

児童館廃止、区民集会施設も削減・大幅値上げ
駅前には高層ビル?

 昨年秋、杉並区が発表した「施設再編整備計画(素案)」では、児童館の全面廃止が打ち出され、衝撃が走りました。

○えっ?児童館がなくなるの?

 杉並区には41の児童館(各小学校区にほぼ1館)があり、全国一の充実度です。子どもたちにとっては安全な遊び場であり、学校ではないほっとする場所。子どもをとりまく大人にとっても交流の場となっています。それを全て廃止する計画です。

 「施設再編整備計画」では児童館のほかにも、私たち区民に身近な施設を大きく変えようとしています(右上の表参照)。私たちが利用しているほとんどの区立施設が移転や別の用途への転換、複合施設化、または縮小・廃止の対象となっており、高層化の計画もあります。こんなにいじらず、現状のままの改築・改修のほうが予算の節約になるのでは!?無理やり公共事業を作り出しているの!?とも思えます。

児童館廃止だけじゃない。施設をガラガラポン


○税務署と「あんさんぶる荻窪」の「交換」!?

 さらに突然発表されたのが、荻窪税務署と「あんさんぶる荻窪」の交換。税務署の跡地には特養を建設するといいますが…区民には晴天の霹靂。「あんさんぶる」は福祉事務所や児童館などがあり多くの区民が訪れる施設です。環境団体、消費者団体などの市民グループの活動拠点であり、また、打ち合わせや読書、勉強もできるフリースペースがあります。何の相談もなく、いきなり「廃止」はひどすぎます。「役所は区民が集まることを嫌っているのでは」と言う人もいます。そう言われても仕方のない計画です。

○区民不在の計画 説明も最小限

 計画の説明会に参加したある方が「一番感じたことは、区民不在」と話していました。いくら質問しても区の担当者は聞きたいことを答えてくれず、また意見も取り入れようとしないのです。しかも区政全般にわたる大転換なのに説明会はわずか5回。それ以前に、計画を立てる段階が全くの密室。区長と一部の幹部だけによるトップダウンです。区民だけでなく一般の職員も全く知らされていませんでした。

○保育園、特養、増やすというが

 この計画は、単に施設の建て替えや統廃合だけでなく、政策、特に福祉のありかたを根本的に変えようとするものです。

 児童館は子どもたちが安心できる場所。心のケアも担っている杉並独自のすぐれた事業です。しかし、こうした数字には表れないものは切り捨てて行くのがこの計画です。

 特養、保育園を増設するといいますが、区立保育園は建てない方針であり、園の運営を行うのは企業になります。区民財産である土地建物を安価に提供して営利に供することにもなります。特養は「民間の事業」と明記。区は建物を建てれば終わり、と考えているようです。介護保険制度変更で介護の基準も引き下げられようとしています。福祉の質と量を保証していた区の公的責任は大幅に後退です。

○「小さな政府」、しかも公共事業は利権に

 今の杉並区政はこの計画にみられるように、政策優先でなく財政優先。ひたすら「小さな政府」をめざす。区民のために新たな事業を工夫するのではなく、むしろ事業を切り捨てることが区役所幹部のポイントになる。そこで生じた財源は区民に還元することなく膨大な公共事業にあて、その利権は区長や議員が利益誘導を図る、という構図になるでしょう。

 「施設再編計画」も税務署との「交換」も、区民財産を私物のように「土地転がし」「建物転がし」する田中区政は、区民不在の「箱物行政」です。

<児童館利用者の声>(児童館説明会にて)

<児童館廃止反対の署名にご協力を!>
(郵送の方は同封の署名用紙をご利用ください)

本棚 ~おすすめです~

永続敗戦論(白井聡著、太田出版)
「侮辱の中に生きることを拒絶せよ」

松尾ゆりのわくわくレポート 「侮辱の中に…」はオビの惹句なのでちょっとカゲキですが、著者は再武装論者でも憲法改正論者でもありません。むしろその反対です。読んで感じるのは、対米従属を続けているために諸問題(外交、安保はもちろん、経済も、原発も)を解決できないでいるこの国の政治に対する強い怒りです。

 本書は、日本が「敗戦」を隠蔽し、戦後も戦前とかわらない人たち(とその後継者。例えば孫とか…)が支配してきたために、対米追随という「敗戦」を続けてきたと指摘します。

 そしてアメリカが急速に力を失い、世界が多極化する今、「戦後の終わり」が訪れ、日本が独立するときが来ている、と。領土問題や中国・韓国との関係にも詳しく触れています。ご一読をおすすめします。

特定秘密保護法 民意を無視して強行

松尾ゆりのわくわくレポート 特定秘密保護法案が国会で可決され、成立しました。私も採決の瞬間、国会正門前にいました。世論調査でも反対が多数を占め、国会に連日多くの人がつめかける中、多数をたのんだ暴挙です。

 同法の廃止をめざす運動も始まっています。同時に、さまざまな場面で、行政の情報公開を拡大させていくことも、ますます大切になってくると思います。


▲街頭投票では3分の2が「反対」 (松尾ゆりもコメントしています。東京新聞2013年10月29日付)