松尾ゆり
わくわくの日々

不透明な施設再編(児童館、科学館)、
あんさんぶる荻窪を杉並区議会で質問


●2015-05-29

5月29日、杉並区議会定例会本会議2日目、松尾ゆりは一般質問にたちました。以下はその原稿で実際の発言は原稿と異なるとこがあることをご了承下さい。
(Q1-1)≫という表示で示した質問への答弁と、それに対する松尾ゆりのコメントは別ページへリンクさせてありますのでクリックしてお読み下さい。

1.施設再編について

 一般質問をいたします。今回は、施設再編整備計画について、あんさんぶる荻窪についての2点です。

 一昨年の素案発表以来、特に児童館の廃止については、区民の中から強い反発の声が起こり、私も議会外にあって児童館問題に取り組んできました。施設再編と児童館について言いたいことは山ほどありますが、本日は、特に、住民自治と情報公開の観点を中心に問題点を論じます。

決定過程の不透明さ

 第一の問題は、決定過程の不透明さです。施設再編整備計画は、素案の発表まで一貫して区役所内部のみの検討で進められました。児童館の廃止に関しても、発表されるまで所管の職員も知らされていなかったということです。これほど徹底して、区民、さらには職員にまで隠して進められた意思決定のあり方そのものに、大きな疑問をいだくものです。

 そして、素案発表以降の説明会では区側は「もうこのように決めたので」と繰り返しています。決定過程は知らされず、案の決定後は「決まったこと」ととりあってもらえないのでは、区民はいつ意見を述べればいいのでしょうか。きわめてアンフェアなやりかたです。

 他区では、公開の審議会をもって施設の管理計画を検討したところがあります。目黒区では有識者会議を公開で13回開催しています。北区でも6回行われています。これらと比較して、杉並区のやり方はきわめて不透明で秘密主義です。

情報提供の不十分さ、不正確さ

 第二の問題点は、情報提供の不十分さと説明の不明確さ、不誠実さです。この施設再編整備計画は、区民サービスの削減、低下を招くものであるのに、そのことをきちんと区民に説明していません。

 たとえば、児童館の廃止については「継承、発展」という言葉にすりかえて、正面から説明しようとしていません。現在のゆたかな児童館事業が廃止されて、年代ごとに分散された貧弱なサービス提供に変わってしまうことについて、まずは「申し訳ありませんが」と謝ってから、区の財政のためだからご協力いただきたいとでも区民に説明するのがスジではないでしょうか。

 しかも区は、ただ「児童館は機能移転」というばかりで、跡地利用はどうするのか、転用なのか売却なのかも示さず、これでは地域の人々は、賛成のしようがありません。あとで述べる科学館も同じです。また、学校統廃合の跡地利用について、地元への説明が二転三転している例もあります。住民はそのたびに、あいまいな情報に翻弄されているのです。

 このように施設再編整備計画についての情報公開、住民参画はきわめて不十分であると考えます。

 区長、区役所は、区民に対して、相手によって中身を変えたり、言い繕うのではなく、常に正確な情報発信を行うべきです。そしてできるだけ早期からの検討状況の公開、および計画策定過程への住民の参画を求めます。この点について区長の見解を求めます。
Q1-1)≫

 とりわけ、来年予定されている第一次プランの改定にあたっては、区民の意見にもとづく抜本的な見直しが求められます。公募区民、住民団体、また有識者なども含む公開の検討会を設置すべきと考えますが、この点についても見解を伺います。(Q1-2)≫

なぜ施設のために事業が削減されるのか

 第三に、行革の一部にすぎない施設再編整備計画がなによりも優先され、有無を言わせず事業を削減する根拠となっていることに対する根本的な疑問があります。

 児童館については、2006年に「児童館等のあり方検討会報告書」が出され、また、科学館については2007年に「杉並区立科学館基本構想策定懇談会提言」が出され、それぞれの事業の基本的な方向性が定められています。その後、これを改定したものはつくられていませんので、この時の方針が生きていると考えるのが普通です。もちろん、児童館、科学館について「廃止する」とはひとことも言っていません。

 しかるに、施設再編整備計画では突如、児童館、科学館が廃止と決められました。これは手続きを踏んで定めた方針を、区自らが真っ向から覆すものであり、行政としての一貫性、整合性を放棄したといわれても仕方がないでしょう。

 住民のための事業、たとえばこの場合であれば、児童館、また科学館ですが、これらの事業をいかに充実、向上させていくかが行政の本来の使命であり、施設あるいは財政といったものはそのための手段であるはずです。それなのに、施設というハード面が最優先され、事業のすべてを支配・制約している現状は本末転倒ではないでしょうか。

 かつて山田前区長の時代に、区長がかかげた職員1000人削減目標が最優先され、区政のすべてを支配して、民間委託や人員削減が行われ、事業が縮小されたり質が低下するなどの問題が起こりました。

 現田中区長のもとで行われていることは、その焼き直しであって、今度は施設再編のために事業、特に子どもたちのための児童館、科学館など、これまで全国的にも高く評価されてきた杉並区の自慢ともいえるすぐれた事業を犠牲にするものになっています。

 施設をどうするかから問題を立てるのではなく、児童館、科学館などそれぞれの事業をどう展開すべきかの方向を定めることが先決です。先に述べた、それぞれの「報告書」「提言」をふまえた上で、区民および専門家を交えて検討していくべきと考えます。区長の見解を伺います。(Q1-3)≫

科学館について

 さて、今まで述べた施設再編の進め方の問題点について、最も典型的に不当な形で行われている例としての科学館の問題について述べます。

 科学館の廃止計画が示されたのは、一昨年11月でした。しかし、「広報すぎなみ」には掲載されず、昨年1月のパブリックコメント募集の告知にさえ掲載がなかったため、科学館を利用している多くの区民が廃止を知らないままに推移しました。科学館の利用者、近隣住民に対する説明会も行われないままでした。

 情報公開とか住民参画とかさきほどから述べてきましたが、科学館については最低限「廃止」という告知すら十分には行われてこなかったのです。しかも、先ほど指摘したように、科学館の「懇談会提言」を覆す形での「廃止」決定です。

 その後、今年度から本格的に事業が済美教育センターと社会教育センターに引き継がれて、科学館は職員がいなくなり、実質機能停止の状態となっています。引き継がれた事業はどうなったでしょうか。

 まず学校教育についていえば、科学館への移動教室が済美教育センターから学校への出前授業に変更されました。昨年までは小学校1年から中学校2年生までの全生徒が1年に1回は必ず科学館での授業を体験し、その際にはプラネタリウムも参観できました。しかし、今年度の出前授業からは、小1、小2がはずされ、プラネタリウムも「移動プラネタリウム」となって、しかも小4、小6、中1、中3の4学年のみと大幅に縮小されています。実験などの授業内容についても、これまでは、各学年、最大で11通りものメニューの中から学校が選ぶことができましたが、今年は各学年ともたった1つのプログラムに決められています。

 プラネタリウムはこれまでの専用施設から移動型のバルーンの中に入って投影を見る形に変わりました。科学館のプラネタリウムの直径15mに比べて7mと小さいもので、体験した方の話によると、本当のプラネタリウムとは全く別物とのことです。小さすぎるために天球のイメージがわかないこと、体育館などで行われるため、専用のイスがなく、プラスチックのお風呂のイスに座って見るのだそうですが、見上げていると腰が痛くなったとのこと。狭いので夏場は熱中症も心配です。

 さらに、科学館ではこれまで、学校の移動教室以外の講座が年間約200回行われていましたが、今年は数えるほどしかできません。移動プラネタリウムが約20回、その他の事業については、いま確定している年度の上半期で9回、年間では倍としても20回足らずです。しかも、小学生が楽しみにしていた夏休みなどの科学教室は中止です。

 質量とも、これまでの科学館の事業とは比較すらできないレベルに落ち込んでいます。目を覆わんばかりです。

 百歩譲って科学館を廃止することを前提にしたとしても、代替事業については万全をつくし、最低でも同じ回数が確保できることを確認した上で実施するのが行政の責任ではないでしょうか。

 学校及び一般区民に対する杉並区の科学学習の事業を、一日も早く立て直す必要があります。そこで質問です。

 教育委員会は教育報の特集号まで出して「新しい科学教育の拠点づくり」をPRしていますが、その内容は不明です。この紙面で教育長は「専門事業者等と協働し、調査研究を開始しました」と述べていますが、専門事業者とはどういった事業者でしょうか。また、調査研究の目的および内容について示してください。(Q1-4)≫

 また、事業者との検討よりも前に、まずは、科学研究、理科教育の専門家からアドバイスをいただくことが必要ではないでしょうか。見解を伺います。(Q1-5)≫

 杉並の科学館の廃止は全国的にも注目されており、私がネット上で把握できただけでも、日本天文学会、日本地質学会など5つの学会が存続を求める要望書を出されています。これらの学会の皆さんにもご協力いただき、また、区民、利用者をまじえて今後の科学館のあり方を検討する必要があります。

 科学館を存続させるのか、廃止するのか。また、廃止して新設する場合にはどのような目的・内容の施設にするかについて、コンセプト、方向性をまず定めてはいかがでしょうか。方向性が定まらないのに事業者と相談している場合ではないと思います。見解を伺います。(Q1-6)≫

 なお、科学館跡地について計画では「特養を視野に入れ」とありますが、その後の検討経緯はどうなっているかについてもお示しください。(Q1-7)≫

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2.あんさんぶる荻窪について


そもそもスジの悪い話

 質問の2番目に、あんさんぶる荻窪について伺います。荻窪税務署との財産交換ですが、そもそも、設置されて10年という新しい施設、しかも駅前の一等地をむざむざ手放すという大変スジの悪い話です。その理由とされた特養建設は交換によらずとも可能であり、かつ、他にも候補地が複数あることを考えれば、「唯一絶対の手段」という区の説明は、どう考えても全く説得力がありません。

合意形成がなされていない

 なにより、区民の合意形成がなされていないことが問題です。1月27日に行われた、天沼3丁目複合施設の説明会では、荻窪南口の町会の方から、「あんさんぶる荻窪廃止についての説明会が行われていない」との指摘がありました。それから4か月も経過した、先日5月22日の説明会でも全く同様の指摘が続いており、いっこうに解決されていません。

 区は指摘されるたびに施設再編では160回の説明会を行った、などと弁解に努めています。160回というと、ものすごくたくさん説明しているように聞こえるのですが、実質的な説明会として行われているのか、大変疑問です。

 そこでまず、160回の説明会の内訳はどのようなものかをお示しいただきたいと思います。(Q2-1)≫

 施設再編整備計画全体についての区民説明会はそのうちの10回にすぎず、しかも、区民センターは井草、高井戸、高円寺のみで、荻窪区民センターははずされています。また、あんさんぶる荻窪でも行われていません。荻窪地域の説明会は、北口の旧若杉小学校だけです。

 一般的にこれほど区民生活に多大な影響を与える計画で、しかも地域性の強い問題については、最低、各地域センター7カ所でもれなく行うのが当然ではないかと思うのですが、意図的に荻窪南口を避けているとしか思えません。そのため、荻窪南口地域の方たちは、地元であるにもかかわらず、あんさんぶるの財産交換についての認識が遅れてしまいました。

 昨年7月には、あんさんぶる荻窪の立地する荻窪5丁目地域の方々からの要望書を携え、町会長さんが説明会を要望されたそうですが、この時も区は開催すると回答していながら、結局、今日に至るまで開いていません。

 その後、あんさんぶるの建て替えに関連して改築時期が早まった桃二小についての説明会も、なぜか桃二小ではなく旧若杉小学校で開催され、その上、この日は桃二小学校震災救援所の訓練日であったとのことで、なぜか桃二小関係者が出席できない日に設定されています。

 ちなみに5月22日の天沼複合施設の説明会も、あんさんぶる荻窪と縁の深い、すずらん通りの商店街総会と全く同じ時間に開催されており、偶然とは思えません。

適切な情報が提供されていない

 第二に、適切な情報が提供されないこと、そればかりか、度々話が変わっていることが問題です。

 最初は、特養をたてるためだから、と説明していたのに、いつの間にか複合施設棟が先にできる話になっており、しかも、当初予定されていなかった子どもセンターまで入っています。一方、特養ができあがるのは、予定通り進行したとしてもこれから5~6年先です。喫緊の課題というわりにはのんびりしたものです。

 昨年、施設再編整備計画のパブコメを行ったときとは、すでに違う計画になってきているのに、区民の同意を得ずに区の判断で一方的にどんどん変更されています。

 特に、あんさんぶる荻窪2階の荻窪北児童館についての情報提供が大変あいまいというか、誤解を与える説明が行われているようです。

 いうまでもなく荻窪北児童館は、あんさんぶる荻窪の中に移転するとき、地元町会や保護者の方々から「公園のない荻窪南口地域の子どもたちのために」との強い要望を受けて設置された、区内でも一番立派といっていい児童館です。利用者も飛び抜けて多く、年間7万2千人もの子どもが利用しています。地元地域にとっては、思いのこもった、かけがえのない施設です。

 当初、町会の役員の方々は、荻窪北児童館はなくなるが、そのかわりに桃二小に立派な施設ができるという説明を受けていたとのことです。

 昨年2月の関東財務局の財産審議会の会議録によると、「荻窪北児童館は子どもセンターとして、荻窪駅に近い小学校に移転整備させる」と説明されています。あたかも児童館の名称だけが変わってそのまま桃二小に移設されるかのような説明ですが、同様の説明が荻窪地域の町会の皆さんなどに対してもなされていたと推測されます。

 昨年12月18日、桃二小の改築検討懇談会の初会合で、ある委員が「桃二小の狭い敷地に児童館を持ってくることができるのですか」と質問したところ、教育委員会は「丸々移転することは物理的に無理」と答えました。それまでの説明とは違ったわけです。

 このとき初めて、地元の方々は、児童館をそのまま移転することはできない、という真実を伝えられたのではないでしょうか。

 そこで確認のため、質問しますが、荻窪北児童館をそのまま丸ごと桃二小に移転することは物理的に不可能という認識でよろしいでしょうか。おたずねします。(Q2-2)≫

 そうだとすると、荻窪北児童館は児童館そのままの移転ではなく、児童館は廃止、一部機能のみの移転ということになります。桃二小の中には、複合施設として、学童クラブ、放課後居場所、子どもの遊び場、地域の集会室が設けられるそうですが、それぞれどの程度のスペースが予定されているのでしょうか。おたずねします。(Q2-3)≫

地元町会から懸念の声

 このように、状況が次第に明らかになってくる中、荻窪南口の町会長さんの中からも、「あんさんぶるの交換を考え直してほしい」と発言する方が出てきています。

 3月25日の荻窪連合町会の会合の席で、開会前にある会長が「あんさんぶる交換は考え直してほしい」と発言、会議の中でも、別の会長が同趣旨の発言をし、これに対して、区長がその場で「もう決まったことだから撤回はできない」と回答したとのことです。

この会長さんは、5月22日の説明会で次のように発言されています。

「私は本当にがっかりしました。私は思想的にではなくて、子どもたちのためにならないと思って、一生懸命お話ししたつもりです。田中区長には、もうちょっと考えていただけないだろうか」

 別の町会の役員さんは同じ22日の説明会で、桃二小で荻窪北児童館の機能をすべてまかなえるものではないと指摘されたうえで、「最も被害を受けるのは現在就学中の桃二小の児童」「大人の都合で急遽改築が浮上したために多方面に波紋が広がっている」「あんさんぶる荻窪と税務署の財産交換の計画性のなさが露呈した」そして「あんさんぶるの存続を求めます」とおっしゃっています。

 あんさんぶるの中でも、特に、荻窪北児童館の廃止に対して、地元荻窪地域の多くの皆さんが、町会長さんまで含めて、子どもたちのことを心配し、胸を痛め、このように懸念を示しておられる現状があるわけですが、こうした民意にもかかわらず杉並区は「粛々と」計画を進めていくつもりなのでしょうか。

 区長は、こうした地元町会の声をふまえ、町会および施設利用者に対して、あらためて財産交換についての正確な情報提供および意見交換を行い、財産交換を検討しなおすべきではありませんか。見解を伺います。(Q2-4)≫

むすび 杉並の自治は神話か

 時あたかも、国会では「安全保障法制」についての審議が始まっています。国民の多数が反対しているのに、憲法すらも逸脱する法律を安倍政権は提案し、多数をたのんでごり押ししています。民主主義がどんどん形骸化しています。

 杉並に目を転じれば、こちらでも、目を疑う、耳を疑うような光景が繰り広げられています。22日の説明会では、さきほど述べたような、町会の方々の真剣な発言に対して、司会の方が発言を止めようとマイクで妨害し、発言が聞き取れないことが度々ありました。発言すらさせない説明会とは、いったい何でしょうか。

 聞き捨てならない発言もありました。

 「区議会の議決がまだなのに、決まったことのように進めていくのはおかしいのでは」という質問に対して、施設再編・整備担当部長は「区長の執行権限として行っていること。議会で議決しないと何も動かないということではない」と答えました。これは、まるで、決めるのは区長、執行機関であって、議会は追認機関にすぎないとすら受け取れる重大な発言です。

 また、昨年の説明会では、当時の企画課長が「声なき声というのがある。反対する人は少数で、意見を出さない大多数の人は計画に賛成なのだ」という、安倍首相のおじいさんかとまがうばかりの発言をされています。

 ここには、区民と真摯に向き合い、理解を得ようとする姿勢は微塵もみられません。住民の意見をよく聞き、正すべきところは変更して、よりよい計画にするという謙虚な態度がなぜとれないのか。住民自治はどこへいってしまったのでしょう。

 沖縄では先日、辺野古基地建設に反対する県民大会が開かれました。翁長知事は、「沖縄の自治は神話」という米軍統治時代のことばを念頭に、「日本の独立は神話かと言われないように」と述べました。

 私は今、「杉並の自治は神話なのか」と問いかけたいと思います。

 国の大きな問題と比べれば、いま述べた杉並の子どもの施設の問題は小さなことと思う方もあるかもしれません。けれど、私は決してそのようには考えません。

 地域の施設の問題ひとつ、民主主義にもとづいて解決できないとすれば、私たちは、どうやって国の大きな問題に抵抗できるというのでしょう。

 いま、杉並区民の自治の力が問われています。区民の皆さん、そして区役所の職員の皆さんと共同して、いま述べた施設の諸問題を、住民自治にもとづき、つまりは地域の民主主義にもとづいて、解決してきたいと思います。以上で質問を終わります。

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