松尾ゆり
わくわくの日々

あんさんぶる荻窪の財産交換や区で働く非正規の待遇など
(平成28年度予算に反対しました)

●2016-03-20

 2016年3月15日予算特別委員会の最終日、予算案に反対する意見を述べました。理由は、どう考えても杉並区が無駄な負担をする「あんさんぶる荻窪」の財産交換へむけて事業が開始されること、また、区で働く非正規、民間委託先の労働条件に低賃金や雇用継続上の問題などがあることなどです。科学館の廃止や図書館の蔵書の削減計画などにも反対との意見を述べました。
(以下は発言原稿です。実際の発言と異なる部分があります。)

 杉並わくわく会議として、平成28年度予算について意見を述べます。

<あんさんぶる荻窪財産交換は区の負担が大きい>

 委員会質疑の中では「あんさんぶる荻窪」の財産交換について時間をとり、問題点を指摘しました。第一にこの財産交換が杉並区にとって負担の大きい交換だということです。

 この交換についてよくよく考えてみると、等価交換だと思っていたが実はそうではなく、杉並区が荻窪税務署の移転先を用意しないかぎり成立しない、すなわち負担付きの等価交換である、と指摘しました。

 それが、来年度予算に計上されている天沼3丁目の複合施設です。総額39億円ということですが、その約7割は起債で賄われるとのこと、現在の子どもたちはあんさんぶるの荻窪北児童館が廃止され居場所がなくなって、しかも大きくなると、この借金も背負うわけです。

<財産交換の交渉経過が不透明>

 第二に、国との交渉経過の説明がきちんとなされていないことです。平成22年12月の区長要望書の文書管理についてうかがいました。総務財政委員会では、「分類したフォルダが適切ではなかったが、どちらにしても保存期間は3年だった」という答弁でしたが、平成25年9月の、あんさんぶる荻窪との交換を提案した文書は「法制・行政手続・重要、緊急文書関係」という長期保存のフォルダに入っていたことがわかりました。22年の要望書をなぜこのフォルダで保存しなかったのか、納得のいく回答は得られませんでした。

<荻窪北児童館廃止のかわりがない>

 第三に、荻窪北児童館が廃止され、その代替施設の見通しはないということです。質疑の中では時間の関係で十分述べることができませんでしたが、荻北児童館について補足します。

 あんさんぶる荻窪のさまざまな機能のなかでも、荻窪北児童館の機能は特別なものです。地域の子どもにとってあんさんぶるといえばイコール児童館です。だからこそ、荻窪地域の人々は、子どもたちのためにと立ち上がり、声を上げ、また、署名活動を行っているのです。

 区の説明によると、廃止される荻窪北児童館の機能のうち、学童クラブは桃二小へ、乳幼児の居場所事業、ゆうキッズは保健所へ移転することになります。

 区は学校内で「放課後居場所事業」を展開すると説明してきましたが、本会議の一般質問などを通じて明らかになったことは、児童館のように子どもたちが毎日遊べるような場所の見通しは全くないということです。また、区の説明では、たびたび「学校という広いフィールドを使って」と、学校施設、特に体育館や図書室、音楽室などの特別教室を、あたかも、いつでも自由に使えるかのような表現をしていますが、児童館のように子どもの遊びのためにつくられた諸室ではなく、学校教育の目的のための施設である以上、子どもが自由に出入りして使えることはありえません。

 質疑の中では、荻窪北児童館を残すために国と交渉したのか、また残す可能性があるのかも確認しましたが、交渉は行っていないし、国の設計で空きスペースが生じたとしても、子どものためのスペースを区が求めるとは限らないことも明らかになりました。また、あんさんぶる荻窪が廃止された場合に、他に児童館にかわる施設をつくるのかについても、積極的な答弁は得られませんでした。2年後のことであり、いまから必死になっても容易ではなく、検討するというだけで、成果が得られるとは到底おもえません。

 この間何度も述べてきましたが、荻窪北児童館は廃止してはならないということを強調しておきます。

<地元への説明会がなく、説明は二転三転>

 第四に、財産交換について、あんさんぶる荻窪の地元に対して、いまだに説明会が開かれていないだけでなく、さまざまな場面で、区側がずさんな説明に終始してきたことを指摘しました。

 桃二小改築そのものの是非にすらかかわるプールの建て替え時期についての間違った答弁、また、桃二小改築検討懇談会における「荻窪北児童館よりも保健所4階のほうが広い」という説明をひきあいに出しましたが、これはほんの一部です。

 「児童館が丸ごとスポッと桃二小に入る」という説明が、財産交換と桃二小建て替えに関する地元荻窪の町会等に混乱をもたらしたことはもちろん、そのほかにも、昨年夏の桃二小建て替え説明会での説明が、議会の答弁とくい違うことなど、枚挙にいとまがありません。

 区民にしっかりと向き合って問題を解決しようとせず、その場しのぎで言い逃れようとする区長、区役所の姿勢は、子どもの居場所を守ろうと必死な住民に受け入れられるはずがないということを指摘しておきます。

 以上、あんさんぶる荻窪の交換を前提とした予算には重大な問題があります。

<地域区民センターの民間委託は低賃金>

 質疑の中では、あんさんぶるの問題以外に、杉並区で働く非常勤、および民間委託の労働問題について個別の事例を挙げて質しました。地域区民センターの運営委託については、過去にもセシオン杉並の委託事業者の倒産から賃金不払い事件に発展し、その後も、委託事業者が変わるたびに、雇用継続の問題や賃金の問題でトラブルが続きました。

 今回も事業者が交代する中で、雇用の継続が保障されるのか心配です。パートの方々が最低賃金の時給907円という待遇も問題です。清掃分野では、資源回収車の作業員が重傷を負う事故があったことを指摘しました。区政のまさに顔として働いている方々の雇用保障、待遇の改善を、民間の雇用、契約関係だからといい、事業者まかせにしている区の姿勢には大きな問題があります。

<学校司書の雇用継続に問題>

 学校司書の問題では、専門性を要求される司書職にもかかわらず、パートという待遇であることの矛盾を指摘しました。

 1年契約の5回更新を終えた方が再受験した際に、今年は半数近く不採用とされていたのは衝撃でした。区として研修の時間もかけてきた人材であり、再受験者の不採用は、区としても研修にかけた予算を無駄にすることにもなります。

 学校司書の全校配置は杉並区の自慢でもあるはずですが、その勤務実態は、大量のサービス残業、持ち帰り残業となっています。やる気のある司書さんがたくさんいらっしゃるのに、それに見合う報酬が払われていないということです。しかも、いま述べたように雇用継続の上での問題があります。学校司書がパートでよいのか、今後検討して雇用形態を転換する必要があると考えます。

<国保年金課の業務委託には反対>

 なお、時間の関係で質疑の中では述べることができませんでしたが、国保年金課の業務委託については、偽装請負の危険性、委託規模のわりに委託効果が小さいこと、個人情報取り扱い上の危険性、また、委託による区役所全体の職場環境の悪化など、大きな問題がいくつも横たわっており、きわめて問題が大きいことを指摘します。

 区は、行財政改革推進計画にそって職員の削減に邁進しています。しかし、杉並区にとって、職員の削減は不必要なばかりか、今や区政の遂行に支障を来す状態です。

 約10年間で30億円の人件費を削減する一方、委託費が100億円増えました。区にとってメリットどころか、財政を圧迫すらしています。さらに問題を深刻化させる国保年金課の委託には反対です。

<児童館は「廃止」と正直に>

 次に、質疑の中で述べることができまなかったいくつかの問題について述べます。第一に施設再編整備計画についてです。

 児童館については先に述べたとおりです。児童館は廃止という区の方針は「継承・発展」と言い換えたところで、実態としていずれ区民の視線にさらされていきます。区民にたいして「廃止」の方針を正直に説明したうえで、あらためて区民に是非を問うべきところです。

 

<杉一小複合化、高円寺中・杉四小・杉八小統廃合の問題>

 学校の建て替えについても大きな問題があります。杉一小は、あの狭い校地に区民センターと産業商工会館の機能の3つを複合化させることに相当の無理があります。少なくとも産業商工会館は現地で建て替えるなど、考え直す必要があります。

 高円寺の小中一貫校については、狭くて環境の悪い高円寺中の校地に3つの学校を統合するという、大変無茶な計画です。私も説明会に行きましたが、なぜ一番環境の悪い高円寺中につくるのか、なぜ南側に校舎を建て工程が北側なのか、教室が北向きなのか、なぜ3校をいっしょにするのか、なぜプールが小中共用なのか、など疑問の声はつきず、説得力のある説明はなされませんでした。

 学校は一度建てれば50年、60年使うものです。地域の人たちの声をもっと真剣に受け止めるべきです。しかも、どの学校も急ぎすぎです。なぜこんなに急がなくてはならないのかわかりません。「オリンピック前で建設費が高騰するのだから、もっとゆっくり計画し、オリンピックが終わってから建てればよいのに」とはどの学校の懇談会でも聞かれた言葉です。

 さて、施設再編整備計画の中で、科学館廃止が昨年の区議会で決まりました。しかし、区民の中に科学館を惜しむ声は根強いです。科学館を廃止しなければならない理由は全く不明確です。科学館がこれまで学校以上の教育を提供し、しかも、基礎科学の分野で高度な内容を子どもたちに提供してきたことを忘れてはなりません。科学館にかわる事業を行うとすれば、そのことを踏まえる必要がありますが、その姿はいまだ見えません。

<図書館の蔵書を何万冊と削減>

 図書館の再編については、施設再編整備計画で、蔵書の削減と地域館の老朽改築、そのさいの複合化がうたわれました。委員会では中央図書館の改修も話題となりました。さまざまな展開を期待したいとも思いますが最大の懸案事項は保存書庫の不足だと思われます。図書館は資料が命です。本あっての図書館です。蔵書の拡充を追求していくべきところ、区は逆に、今後、年間目標をたてて毎年何万冊と削減していく計画のようですが、器を縮小し、それにあわせて本を廃棄していくのは即ち図書館の縮小であり、とんでもないことです。むしろ、建てかえを利用して保存書庫を確保、拡充していくべきです。このほかにも、施設再編整備計画の見直しに当たり、多くの問題があります。

<保育園の質確保を>

 次に、福祉施設の問題です。今回予算案が修正されたほどに厳しい待機児童の現状、そして特養の不足は深刻です。

 保育園、特養などの福祉施設の増設が重要であることはいうまでもありません。ただ、危惧されるのは、ハコ物だけはたくさんつくるものの、サービスの質・量を十分提供できるのかという問題です。この点に区は対応できていません。

 認可外の園が保育内容の問題点をたびたび指摘されたあげくに閉園したケースもありました。また、認可園でも園庭がないのが普通のようになってきました。そこで育つ子供たちのことを思うと胸が痛みます。特養整備では、天沼三丁目や科学館跡地など、次々に、特養建設が計画されますが、区の北部に集中し、地域に偏りがありすぎます。また、大型特養に収容するという考え方は時代遅れで、小規模施設や在宅サービスの充実にシフトしていくべきです。

<産業振興、商品券事業実施を>

 最後に産業振興についてです。観光やアニメなどが委員会の話題となりましたが、地域の中小企業の多様な業種、それぞれに必要な支援があるはずです。

 特に商店街振興は重要ですが、中でも商品券事業の復活は必要だと思います。区が直接的に支援でき効果のある数すくない政策の1つだと思いますので、会派として予算要望しましたが実現しませんでした。商店街振興について、あらためて真剣に取り組んでいただきたいと思います。

 以上をもちまして、杉並わくわく会議として、平成28年度一般会計、国民健康保険事業会計、介護保険事業会計、後期高齢者医療事業会計、中小企業勤労者福祉事業会計の各予算及び一般会計補正予算(第一号)に反対いたします。

 また、議案第17号、議案第21号には反対、その他の議案には賛成といたします。終わりにあたり、予算委員会の審議に際して、職員の皆様には多数の資料を調整していただき、また多くのご教示をいただきました。心より御礼申し上げます。

▲ページの上に

わくわくの日々

▲ページの上に