松尾ゆり
わくわくの日々

あんさんぶる荻窪の財産交換に反対する意見
(3月16日杉並区議会本会議)

●2016-03-21

 2016年3月16日「あんさんぶる荻窪」の財産交換について本会議で審議されました。総務財政委員会の報告のあと、私は「継続審査」を求める動議を出しました。即時採決されましたが、賛成少数で否決。その後、私と堀部議員が反対意見を述べました。そして採決の直前、共産党・原田議員から「記名投票」の動議が出されましたが、賛成9名で否決(記名投票は10名で可決)。起立採決の結果可決と決まりました。反対は共産党と木村議員、堀部議員、私の9名。それ以外の議員はすべて「賛成」でした。以下は、私の反対討論の原稿です。この交換のおかしさをまとめて訴えたつもりですのでごらんください。また、この中に書いたとおり、実際の交換はまだ2年先なのです。その時どんな状況になっているかわかりません。区議会が賛成したとはいえ、交換はまだ不確定だということをみなさんに訴えたいと思います。(以下、原稿です。実際の発言とは異なる部分があります)


 「議案第25号 財産交換について」について、ただいま継続審査を要望したところ、残念ながら多数のご賛同を得られませんでした。現状で与えられた材料から判断するかぎりは反対せざるを得ないという立場から意見を述べます。

(1)議案自体の正当性

 第一に、この議案自体の問題です。実際の交換まで、まだ2年以上あるのに、なぜいまあらかじめ交換を議決しなければならないのか疑問です。こちらが仮に「財産交換を行う」と議決したとしても、国の側はなんら決定を行わないので、杉並区側が勝手にそう言っているという話にとどまり、権利関係になんら変更はありません。また、2年後には財産価値を再鑑定して交換の差額を確定し、条件を決めなければ交換はできないので、いずれにしてももう一度議決しなければなりません。同じ財産交換について二度の議決を行うことは、余分な作業であり、そもそも必要ないと思われます。

 次に、議案に表示された財産価値の問題です。今回、杉並区側として財産鑑定を行った結果、あんさんぶる荻窪の土地・建物は43億4000万円、荻窪税務署等用地は43億1000万円とされています。この財産鑑定についても、のちに述べますが、その前に、この数字自体がどういう意味を持つのかという問題です。

 先ほど述べたように、2年後には再鑑定するため、これは取引価格とはなりません。偶然同じ価格になることがないとはいえませんが、その可能性はきわめて低いとみるのが自然です。したがって、この価額はあくまでも参考価格でしかありません。実際、国の方にたずねたところ、法に定められた「高い方の4分の1以内の差」にとどまっていて、合法的に交換ができるかどうか判断しただけということでした。

 また、2年後の取引価額はどうやって決めるのでしょうか。2年後には、区も国も再鑑定を行って、実際の取引価額を決めるということです。しかし、その際に、どういう手法で相互の交渉を行うのかは不明です。国は今回も鑑定を公表していないように、予定価格を類推させるものを公表しないと言っていますから、おそらく、区側も十分に情報を提供されない危険性があるのではないかと思います。区側に不利な条件にならないのでしょうか。これらのことが十分に解明されていないのに、区民の財産であるあんさんぶる荻窪の交換を議決することは早計にすぎると指摘します。

(2)杉並区にとって損な交換

 第二に、財産交換のスキームそのものの問題点です。予算特別委員会の質疑でも指摘したように、この財産交換は本質的に杉並区にとって損なスキームとなっています。なぜならば、税務署が現地建て替えを予定していたところ、移転先を区が用意するからという条件でどいてもらう話だからです。

 6300平米の用地を区が一体的に利用したいという希望を持った、そこまではよいとしましょう。その場合、普通に考えると現金で買うわけですが、そこで問題になるのが税務署の存在です。また別の考え方として、このかんも言われてきましたが、税務署には現地建て替えをしてもらい、残りの土地を区が活用するという考え方に立てば、今度は6300平米全部を活用することは不可能となります。つまり、どちらにしても税務署の存在が阻害要因になります。

 廃校になった学校跡地など、区の財産として活用できるもっと広い土地が近隣にもあるにもかかわらず、なぜ区が6300平米をどうしてもこの場所で活用したいとこだわるのかは、いまひとつ理解できませんが、税務署にどいてもらうためには区が場所を提供するしかなかったことは確かです。すなわち、この話は最初から等価交換ではなく、区が税務署の移転先を用意するからという条件付きの交換であり、税務署側にそもそも移転の考えがない以上は区の負担により移転してもらうしかなかったのです。

 現在のスキームでは、あんさんぶる荻窪に税務署を移転させるわけですが、あんさんぶる荻窪は空き家ではなく、現役でフル稼働している施設です。1日も休むわけにはいきません。また、福祉事務所などの移転先があるわけでもありません。そのため新しい庁舎を建てざるをえないことになりました。玉突きで移転するのでわかりにくくなっていますが、これは税務署の移転を区民の負担で行うのと同義です。

 この財産交換のために払う区の負担が大きすぎるということを私は指摘してきました。それに対する反論なのか、総務財政委員会ではキャッシュフロー計算というものが出されました。その場でも、この計算の弱点は指摘されていますが、根本的に考えなければいけないのは、キャッシュフローだけではなく、バランスシートで考えなくてはいけないということです。これについては、建物の減価償却なども含め、今後ともきちんとした数字に基づいて議論する必要があると思いますが、政策経営部長が先日の答弁で「点でなく線で見なくては」とおっしゃったのは、まさにこのバランスシートで見るということだと思います。キャッシュフローだけで見たときには時間軸をどうとるかによっては、プラスマイナスまで逆転してしまうからです。

 この間の区の説明では、6300平米を負担なく手に入れられる、といった表現が盛んに出てきました。しかし、それは本当にお得なのか?ということが問題になります。金銭では支払わないかもしれませんが、負担がないわけではありません。あんさんぶるの土地・建物という資産で対価を払うわけです。このことをバランスシート上でみれば、とんとんということになります。別にお得ではありません。さらに、先日の資料にあった多額の金銭も必要となります。

 しかし、国有地賃貸の方法であれば、バランスシート上は変化がないが、そのうえに、国有地を活用することができ、特養整備という政策目的を達成できると、このかん私はずっとそう指摘しているわけです。こうした視点からの検討が不足していると考えます。

 次に、財産鑑定についてです。区が依頼した財産鑑定については一般質問でも述べたので簡単にいいますが、あんさんぶるの土地・建物に対して、2年前の鑑定にはなかった市場性修正率というものが適用されてざっくり2割引にされていること、また、鑑定した会社が国の審議会委員を出している会社であり、利益相反の可能性が否定できないことから、この議案にのべられている価額そのものが揺らいでいると指摘します。仮にこの2割引がなければ、あんさんぶるが10億円以上高いことになり、交換は合法ではあるものの、国がこの条件で交換に応じるかどうかは疑問でしょう。

 さらに問題は2年後の交換の時点でこの価額がどう変わるかです。区が2年後も大丈夫と答弁を繰り返していることに対して信用するという意見も示されていますが、私はそう甘くないと思います。仮に価額が逆転した場合、あんさんぶる荻窪の土地・建物のほかに、キャッシュフロー試算で示された多額の経費、その上に、区がさらに金銭を払って差額を埋めることになってもこの交換をやりぬくというのでしょうか。区民に説明がつかないと思います。

(3)政策目的は何か 特養建設ならほかに手段がある

 第三に、特養建設が目的なら、ほかに手段があるということです。そもそも、この事業の政策目的は何なのか。2年前に初めてこの案件が区民に示されたとき、区は「喫緊の課題である特養建設のため」といっていました。その言葉を信じるなら、先ほどから述べているように、特養に必要な土地のみ購入するか、あるいは国有地賃貸の方法があります。税務署の建て替え方針が示されたときに、最初からその方法をとって国と交渉していれば、とっくに特養が建ち、いまごろ入居の募集をしていることでしょう。しかし、このかんの議論の中で、区長はじめ区の説明は「あの土地を一体的に利用することが重要だった」と、土地そのものが目的であるかのような表現に変わっています。してみると、特養建設というのはあとから考えた理由だったのかとも思われます。

 また、今からでも国有地賃貸のスキームを利用すべきという、私や他の議員の指摘にたいして、それはいまさら不可能という説明がなされています。しかし、私も先日、関東財務局東京財務事務所の次長さんはじめ4人の国の人たちと面会をして、あらためてこの点について確認をしております。

 「区が取り下げるなど大きな変更のあったときには国として検討をする」というのがその回答です。もちろん、国も「ここまで進んだ話はこのまま進めたい」という意向であることはたしかです。しかし、可能は否定されているわけではなく、杉並区しだいということです。

 また、今更引き返して財産交換をとりやめれば、杉並区が国に対して信用を失うという意見もありました。この点についても確かめましたが、国と地方公共団体の関係の中で、特にそのようなことはないという回答をいただいています。つまりは、財産交換をもういちど見直すことは、いまの段階でもまだ不可能ではないということを指摘しておきます。

(4)区長要望書の隠匿

 なお、国の話として、もうひとつ言っておかなくてはならないことは、国は平成22年の区長要望書から今日に至るまでの経緯をひとつながりのものとして見ているということです。区の説明の中では、22年要望書で税務署の統合や移転先を用意するといったものの果たせず、その話はそこで終わりであるかのような表現が見られますが、そうではないということを申し上げます。

 国に対して経緯をお聞きしたときに、私は非常に不思議に思ったので、22年の要望書で移転先を示すと言われているのに、その後国からは何も問い合わせなどしなかったのかと尋ねたところ、平成24年と25年の2回、区に対して問い合わせをしたとのことでした。それにしても、のんびりした話だと思い、そのほかには何も言っていないのかと聞いたところ、そこは国と地方公共団体の信義則であり、区長が用意するといった以上は移転先を用意してくれるものと考えて、待っていたとのことでした。「ただずーっと待っていたんですか」というと「ずーっと待ってました」とのことでした。区の説明のように、「総合計画にも盛り込むことができなかったので、いったん終わったこと」などと国に対して言えば、国がいうところの信義則はめちゃくちゃになってしまいます。

 当然にも国は、区が移転先を提示するものとして、待っていた、その結果、あんさんぶるが提示をされたと受け取っています。途中から違う話になったのではなく、平成22年12月から今日まで、国と地方公共団体の信義則にもとづく1つの話なのです。また、平成22年の区長要望書に書かれていた「税務署の賃料負担を発生させない」という文言をよく考えてみると、区側が負担するということであり、金銭で負担しないとすれば、不動産を提供する、つまりは財産交換にほかならないことがわかります。

 すなわち、この話ははじめから財産交換を前提したものであった、国はそのように承知していたということです。この認識に立ったときに、平成24年2月、当時の区議会議員の方があんさんぶる荻窪に関連する資料を請求したにもかかわらず情報公開がなされなかったことは、不当なことということができると指摘しておきます。

(4)地元を無視して児童館を廃止

 第四に、私の意見をしめくくるにあたってやはりどうしても言わなければならないことは、地元の声です。地元荻窪五丁目町会などから、再三再四説明会の要望が出されているにもかかわらず、区はいまだに財産交換についての説明会を一度も開催していません。

 施設再編整備計画の策定にむけた説明会では、なぜか荻窪地域区民センターを避けて旧若杉小学校で2回開かれています。さらに、再編計画の個別テーマごとの説明会のうち、桃二小建て替えについての初めての説明会も、なぜか桃二小ではなく旧若杉小学校で、しかも、桃二小地域の防災訓練の日にぶつけるように開かれています。

 昨年7月には町会の要望に一定答えて桃二小建て替えについての説明会がやっと桃二小現地で初めて開かれました。しかしこのときも、町会が「併せて、あんさんぶるに関する説明会も行ってほしい」と重ねて要望しているのに、区からは「あんさんぶるについての説明会は行わない」との返事が返っています。

 これらの説明会、あるいは天沼小学校で行われた複合施設建設の説明会などに、荻窪五丁目や南荻窪の町会の方がやっと参加しても、発言を十分にさせてもらえないということも続きました。発言しようとすると司会にさえぎられたり、マイクで音をかぶせられたりして、十分に発言ができない。あんさんぶる荻窪のことを聞こうとしても、その話はできないと言われるなど、行政主催とも思われない乱暴なやり方で意見を封殺してきました。区が「丁寧にやってきた」というところの説明会の実態を私は目の当たりにしてきました。きわめて不誠実な態度であり、区政が区民、利害関係者に対して政策を説明するという最低限度のこともできていません。

 さらに、町会の要望書についても問題がありました。一昨年荻窪地域の7町会長から連名で提出された「桃二小早期改築の要望書」については、文章を区の課長が作成し、役職名と個人の姓名まで印刷されたものを、地域係の係長が「急いで捺印してくれ」と集めてまわったことが指摘され、当初否定していた区も、議会の場で関与を認めざるをえませんでした。

 区長はこの文書をもって「財産交換を前提したもの」と発言しましたが、捺印した人はあくまでも桃二小の建て替え要望としか受け取っていませんでしたし、そのため、あとになって印鑑を撤回した町会長がお二人いらっしゃいます。

 この要望書の前提となったのが、「児童館は丸ごとすぽっと桃二小に移転する」という区の説明でした。あんさんぶる荻窪の児童館がなくなってしまうことは残念だが、全く同じものが桃二小に建設されるならよしとしよう、できるだけよいものができるように区に協力しようと思われた地域の方は多いのです。このような区の不正確な、二転三転する説明により、地元は混乱していました。

(5)最後に

 最近になって、ようやく、あんさんぶるの財産交換にかかわる経緯やいろんな事実が明らかになり、地域では、疑問の声が膨らんでいます。とりわけ、何度も指摘してきたように、荻窪北児童館の存続をもとめる声は次第に広がっています。

 昨日私ども区議会議員に届けられた「議員の皆様に訴えます」という文書の一部を最後に紹介します。

「仮に本会議で交換が可決されたとしても、私たちがあきらめることはありません。私たちは、訴訟も含むあらゆる手段を講じて、荻窪北児童館を守ります。なぜなら、地域の子どもたちにとって絶対に必要な場所だからです。私たちには、子どもたちを守る義務があります。私たちは、絶対に、あんさんぶるを税務署にはしません。」

 地元の皆さんは、本日も傍聴に来られています。区長、区議会議員のみなさん、区役所のみなさん、この言葉を深く胸に刻んで、よく考えてください。以上をもって、私の反対意見といたします。

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