阿佐ヶ谷のまちづくり~土壌汚染問題を中心として~(2019年度予算に反対する意見)
●2019-3-15
2019年3月15日予算特別委員会において、予算に反対する意見を述べました。
第一に、阿佐ヶ谷の再開発問題です。土壌汚染問題を中心として論じました。(1)土地の権利交換の評価額への影響。(2)土壌汚染対策の責任の所在。(3)学校が開校してからの環境汚染の心配。これらが考えられます。区は「河北病院が全面的に責任を負う」から「汚染がないものとして土地評価」などとふざけたことを言っていますので、反論しております。
また、この地域で最近オオタカの姿が見られた、と発言しましたが、「ツミ」ではないかとの情報がよせられました。猛禽類の保護、ひいては生態系の保全についても述べました。さらに、地区計画導入に際しての「公聴会」について。本会議での答弁は間違いだと思うので指摘しました。
第二に消費税について。昨年5月に「あんさんぶる荻窪」と荻窪税務署の土地・建物交換が行われましたが、その際なんと、区は消費税の請求をしていなかったことが判明。1億2000万円の損になっています。財務省へのサービスだったのかと思ったのですが、実は、消費税のしくみを区が誤解していたということがわかってきました。この件、今後も追及いたします。
田中区長の「土地転がし」で区が損をするのはもうやめてほしいと思います。
第三に児童館や保育園などの子ども政策について述べました。杉並区のすぐれた子ども政策をなぜ目の敵にして潰していくのか。区長はなにかウラミでもあるのか。
(以下は発言原稿です。実際の発言とは異なる部分もあります)
【阿佐ヶ谷のまちづくりについて】
杉並わくわく会議として、来年度予算案についての意見を述べます。
第一に、阿佐ヶ谷北東地区のまちづくりについて述べます。阿佐ヶ谷北地域に育ち暮らして来た者として、この計画で地域が全く変わってしまうことは許容できません。
質疑の中では、主に土壌汚染問題、換地価格、自然環境の保全についてただしました。
まず、河北病院は土壌汚染対策法上の特定施設であり、東京都環境確保条例の指定作業場です。すなわち、有害物質を取り扱っている、土壌汚染があることが前提となる施設です。
指定作業場であることが本件でどう問題になってくるかというと、第一に土地の権利交換にあたっての評価額です。第二に、病院の廃止とその後の工事に際しての土壌汚染対策の責任の所在です。第三に、学校が現実に開校して以降の環境汚染の心配です。
【河北病院は「指定作業場」であり汚染が前提】
まず、交換価値について、区は一貫して「土壌汚染については河北病院が全面的に責任を負うので、換地の評価には汚染を勘案しない」との態度です。しかし、土壌汚染調査は、あくまでも河北病院がけやき屋敷用地に移転した後に行うとのことであり、その実態は今のところ全くわかりません。病院が指定作業場であることを前提すれば、汚染があることを前提として評価する必要があります。
何度もいいますが、この時点ですでに「照応原則」に反するのでそもそも換地が成り立たない土地だということです。区役所、区議会の皆さん、法の求める公正さを守らなくていいという立場に少なくとも私は立てませんが、みなさんはどうなのですか。
【土壌汚染は「可能性」でも価格に影響】
不動産鑑定においては、土壌汚染に対して、浄化費用分及び心理的減価(スティグマ)分をさしひく必要があるというのが常識です。
また、本件に関しては土壌汚染の有無がいまのところ不明ではありますが、その場合には土壌汚染がないものとしてはならないというルールがあります。日本不動産鑑定士協会連合会の「不動産鑑定評価基準に係る実務指針」では「土壌汚染の存在の可能性が認められたときに、それが価格形成に重大な影響を与えないと判断できる場合以外は、土壌汚染の影響を考慮しなければならない」、また、「汚染の除去等の措置が行われたとしても、措置方法次第ではそれによる最有効使用の制約に加えて、汚染物質は存在し続ける場合もあり、また汚染物質を除去した場合でも汚染地であったということが心理的嫌悪感を招来し、対象不動産の減価の要因となる場合がある」とされています。
【本件病院跡地は汚染地かつ浸水地で売却困難】
すなわち、汚染地は汚染の可能性があるというだけでも、またみつかった汚染が除去されたとしても、その価格を低く見積もられるのが常識なのです。本件病院跡地は加えて浸水地でもあり、地権者からすれば売却にはきわめて不利な土地ということになります。これを区が駅前の一等地と交換してくれるとは、天の助けのような話です。
逆に、区は、不当に高い代価を払うことになり、地権者及び病院に対する不当な利益供与ということになります。公共財産の処分としては、許されません。
【豊洲市場と同じ手法】
汚染地を汚染のないものとして扱うこの手法は、豊洲市場用地の土地交換で使われたものであり、田中区長はその経験から、ここでも同じ手法を使おうとしていると思いますが、区民の財産を毀損する不当な手法であり、正当な価格算定を要求します。
ちなみに、換地にかかわる鑑定の情報などは請求しても黒塗りで出てくる状況です。これでは区議会、区民は、正しい判断ができません。仮換地指定以前に、換地計画とその根拠となる情報を区民に公開することが求められます。
【土壌汚染対策に瑕疵担保責任を】
第二に、土壌汚染処理の責任についてです。協定では「土壌汚染拡散防止措置、掘削除去」を病院の負担で行うとなっています。ところで、掘削除去といったところで、発見することのできた汚染土壌の除去、入れ替えであって、敷地全体の土壌の入れ替えではないことに注意が必要です。土壌汚染調査はサンプリングで行われるので、発見できた以外にも汚染が残っている可能性は否定できません。
病院側が対策を行った後にも隠れた瑕疵がみつかった場合のために、病院の瑕疵担保責任を明記した契約を結ぶ必要があることは指摘しました。
他の委員の質問に対して、吉田副区長が「馬橋公園拡張用地では国の責任でちゃんとやっている」と発言しましたが、その用地の国との契約において、瑕疵担保責任がうたわれているのですから、まして民間との取引においては当然のことと考えます。
【土壌の全面入れ替えが必要だが】
第三に、学校用地としての利用と汚染の可能性の問題です。いまのべたように病院側が汚染対策をしたとしても、のちのち汚染が見つかる可能性がないとはいえません。それは、学校が建設され、運営が始まったのちに発見される可能性もあります。
それを避けるためには、やはり土壌の全面入れ替えが必要と考えます。小学校用地として使われる前提で話が進んでいるのですから、病院の責任において、土壌の全面入れ替えを行うことを求めるべきです。先ほどの土地評価の話にもどると、そこまでの保証があってはじめて「汚染のない土地」としての評価ができるものです。
【土壌入れ替えは区の負担になる?】
ところが、区が民間に委託した「阿佐ヶ谷駅北東地区大規模敷地活用に関する調査業務委託報告書」では杉一小改築の費用算定に土壌入れ替えの費用7億3000万円が計上されています。河北の土壌汚染対策とは別に、区の負担で土壌全面入れ替えを実施するのかと問うたところ、それは今後の調整ということでした。
今後の調整とはすなわち、土地区画整理事業全体の事業費の中に紛れ込ませてしまおうということなのか、そうして病院は負担を逃れて実質区負担になるのではないかと危惧します。
【土地区画整理事業が隠れ蓑に】
個人施行の土地区画整理事業という形をとっていることが、あらゆる情報の隠れ蓑となっています。区の財産処分をチェックするはずの財産価格審議会も口出しできません。
なお、吉田副区長は日産跡地の話もされましたが、ここでつけたすと、この土地はURが購入後も地下水の汚染がみつかり、日産が薬剤処理したが、その後、1年間のモニタリングが行われています。河北病院跡地も、汚染の状況によってはモニタリング期間を必要とし、結果として、杉一小の移転はさらに1~2年延びる可能性も出てきます。これも調査業務委託報告書で指摘されていたことです。
【絶滅危惧種の猛禽がいる】
次に、環境保護の問題です。現在の計画では阿佐ヶ谷のシンボルであるけやき屋敷の森がほとんど消滅してしまいます。「意見交換会」でのコンサルの説明では緑化率を25%とするとの案も示されていますが、その大部分は新たな沿道緑化であり、森は南西の一部が形だけ残るだけです。
東京都のレッドリストで絶滅危惧種IAに指定されているツミの話をしました。IA類とは「近い将来の絶滅の可能性が非常に高い」という分類です。
ツミは2013年の杉並区自然環境調査において、のべ12羽が目撃され、区内で新たに繁殖が確認されました。先日本会議でお示しした写真は阿佐ヶ谷駅近くの商店街で撮影されたものですが、けやき屋敷、神明宮でも目撃されています。
環境省の「猛禽類保護の進め方」では、猛禽類は行動圏が広く、調査によって得られる情報は断片的なものでしかない。したがって専門家の知見を得て不足している部分を補うことが重要、とされています。
営巣地だけを守ればよい、個体が視認されなかったから終わり、ではありません。当該地はよそに住んでいるツミなど猛禽のえさ場になっている可能性も高いのです。
【森がなくなれば生態系が失われる】
猛禽は生態系の頂点です。猛禽がいるということは、下位の生態系も健全なのであり、森がなくなることは、猛禽を頂点とするそこにある生態系が根こそぎ失われることになります。低木でも芝生でもなんでもいいから緑を植えれば緑化だという考え方では守れません。他の委員から玉川上水周辺の生物多様性の保全という発言がありましたが、他方これほど都市化が進んだ阿佐ヶ谷における残された生物多様性はいっそう貴重で壊れやすいものです。区長が主張するように、区が関与したからみどりが守れるというのなら、この森を守るために、病院配置、学校配置をいまいちど見直す必要があると指摘します。
【公聴会は「ひとつの例」ではない】
次に、地区計画等における公聴会の開催についてです。
本会議では「公聴会は例示のひとつ」との答弁でしたが、これは国交省の見解とは異なるものです。
「都市計画運用指針」では「特に、法16条第1項において公聴会の開催を例示しているのは、住民の意見を反映させるための措置として、住民の公開の場での意見陳述の機会を確保するべきという趣旨であることに留意する必要がある」と述べています。ここには「公聴会は一つの例示」とする言葉はなく、あえて公聴会、と書かれている意義について注意を促しています。
【説明会と公聴会は違う】
つづいて「説明会は、都道府県または市町村が作成した都市計画の原案について住民に説明する場と考えられ、公聴会は、都道府県または市町村が作成した都市計画の原案について住民が公開の下で意見陳述を行う場と考えられる。(中略)今後は、都市計画の名称変更その他特に必要がないと認められる場合を除き、公聴会を開催するべきである」としています。
説明会と公聴会を明確に区別し、そのうえで公聴会の開催を求めているものです。説明会ではだめなのです。本会議で答弁された「意見陳述の機会」を国交省の指針の趣旨を忠実に反映して行うように求めます。
【消費税について】
次に、消費税について述べます。今年10月の消費税率引き上げは区民の生活と営業に大きな打撃となるだろうことは想像に難くありません。質疑への答弁では、そのへんの関心があまり高くないらしいので残念に思いました。もう少し事業者に寄り添った対応が必要だと思います。
【消費税1億2000万円の請求もれ】
ところで、あんさんぶる荻窪の財産交換を調べているうちに、大変な問題にぶつかりました。あんさんぶるの価額見積もりに消費税が転嫁されていなかった問題です。この金額は約1億2千万円にのぼり、この取引で区長はこれだけの損害を区に与えたことになります。 転嫁しなかった理由は、区が消費税を納税していないから、請求しなかったということでした。もし本当だとすると、これは大変な誤りです。
【「益税」の誤り】
質疑でも指摘したことですが、よく「益税」といって「消費税は預り金であり、免税業者が消費税を徴収するのはおかしい」という論が見られますがこれは誤りです。事業者は消費税を徴税しているのではなく、自らが払った消費税を商品価格に転嫁することができる、という仕組みです。私たちがまちで買い物をして払う消費税は、正確には税ではなく、消費税が転嫁された価格の一部にすぎません。
杉並区はこの誤った「益税」の考え方にとらわれ「消費税を払わない者が消費税をとってはいけない」と間違えてしまったのではないでしょうか。もちろん、価格に転嫁するしないは事業者の自由ともいえます。しかし、区の場合は転嫁しなければそれはそのまま区民負担になってしまいます。あんさんぶるの財産交換では1億2千万円もの区民負担となってしまいました。しかも、他の資産売却でも同様に処理されてきたというのだから深刻です。
同時に、消費税に対する誤った認識は、区民、事業者に対する区の政策にも影響を与える恐れがあります。特に、事業者の皆さんの経営と消費税の関係を誤って解釈する恐れがありますので、認識を正していただくようお願いします。
すでに売却された、あんさんぶる等の資産について、この消費税分についての取り扱いは今後適切な形で是正を求めていきたいと考えています。
【田中区長の「土地ころがし」】
そうでなくても、あんさんぶるの財産交換には、財産鑑定が行われず、価格調査という形で交換が行われたこと、またその内容にも問題があることは昨年の予算特別委員会で指摘したところです。
田中区長が、区有地および区施設を、土地ころがしのように国や民間の土地と交換し、そのたびに区の財産が毀損されていくのは見ていられません。
このたびの阿佐ヶ谷の再開発においても、駅前一等地の貴重な区有地である杉一小敷地を手放し、駅前の一体開発に供するのは、区民のためではなく、不動産ディベロッパーや金融機関、ゼネコンなどの利益のためでしかないと厳しく指摘するものです。
【公共用地が食いものにされる】
他区でも、中野区の東中野小跡地のマンション開発、港区の田町駅前の土地区画整理事業による公共用地を利用した高層ビル街建設など、公共用地を食い物にする開発がいま都内で相次いでいます。このような手法を杉並区に、阿佐ヶ谷に持ち込むのはやめていただきたいと思います。
【区内各地に道路問題】
都市整備ではこのほか、西荻窪の132号線をはじめとして、高円寺の227号線、この阿佐ヶ谷の133号線、相互通行問題がくすぶりつづける荻窪131号線。外環道、外環の2など多くの道路問題。動き始めた西武新宿線連続立体事業もあります。大型公共工事が住民の生活に及ぼす影響ははかりしれません。地域住民が主人子となるまちづくりに転換する必要があると指摘します。
【児童館、保育園等子ども政策】
次に、児童館・学童クラブ、保育園等子ども政策について述べます。委員会質疑では、最近の事件を受けて、児童虐待への対策を求める多くの発言がありました。どのご意見ももっともと思われるものでしたし、区が対応を急いでいることもわかりました。
しかし、虐待の発見とその後の対処は、いわば対症療法です。もちろん、緊急に対処が必要なケースもありますが、行政が行うべき本質的な責務はもっと深いところにあるのではないでしょうか。
虐待行為やいじめなどが起こらないような親子関係、子ども相互の関係づくり、そして、子どもが安心して自分らしく成長していける社会と家庭のゆたかな環境づくり。いわば、対症療法以前の基礎体力作りのところで親子を支えていくことは、基本的な行政の役割です。
【児童館がセイフティネット】
杉並区の児童館は、職員はもちろん、地域の子育てネットワーク事業で、地域の人々や学校、行政機関と連携しながら子どもたちを守っています。一例として、昨夜説明会に参加するため訪れた堀ノ内南児童館では、町会の方が、特別支援学級の子どもたちの送迎などサポートを行っているとのこと、地域の力で子どもたちが守られていることがよくわかりました。
これこそが杉並の子どもを守るセイフティネットです。児童福祉事業ではない放課後等居場所事業では、ここはカバーできないところなのです。
しかし、新年度も児童館の廃止がスピードアップして進められます。
【認可とは名ばかりの保育園】
保育園も同様に、単なる子どもの預り所ではなく、親も子もともに成長していく場として保障されてきました。しかし昨今は、その能力のない保育園が増えてきました。区立保育園の民営化、及び、新しい民間園の質の問題です。区は認可保育園を今後も増やしていくといい、それ自体は必要なことですが、残念ながら、最近の新しい園の多くは、認可とは名ばかり、ビルの一室だったり、園庭がないのは当たり前、驚くほど狭い敷地に、子どもをぎっしり詰め込むような園が多くなりました。数ばかり追いかけて、保育の質がおきざりになっています。
児童館廃止及び保育園、学童クラブの民営化に歯止めをかけて、今いちど、杉並区のすぐれた子ども政策、児童館、保育園のあり方に立ち戻ることが必要と指摘します。
以上、区政の主な問題点について述べてまいりました。
杉並わくわく会議として、平成31年度杉並区一般会計予算ほか4予算には反対とし、関連議案のうち、第23号議案については反対、他の議案については賛成とします。
終わりにあたり、職員の皆様には、この間、資料の調整に多くの労力を割いていただき、また様々な問題につきまして丁寧にご教示いただきましたことに心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
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